デヴィッド・ボウイのライブ盤の登場です。ジャケットを飾るのはもちろん我らが鋤田正義氏による写真です。ジャケットの内側にも鋤田さんによる写真が2枚。ボウイの魅力は鋤田さんによって完璧に視覚化されました。もうこのジャケットだけで100点満点です。

 この作品は、2018年のレコード・ストア・デイ限定でアナログ盤によるリリースがなされた未発表ライブ音源で、このたびめでたくCD化されたものです。没後リリース作品として初めてのアイソラー2ツアー音源です。

 ボウイは「ロウ」、「ヒーローズ」というボウイ史のみならず、ロック史を画する傑作を発表した後、大掛かりなワールド・ツアーに出ます。アイソラー2と名付けられてはいますが、一般にはライブ・アルバムの名前をとって「ステージ・ツアー」などと呼ばれるツアーです。

 ツアーは1978年3月にアメリカで始まり、5月からヨーロッパ、その後11月からオセアニア、12月に日本で幕を閉じています。アメリカでの音源が「ステージ」として、同年9月に発表され、日本公演はNHKの「ヤング・ミュージック・ショー」で映像が流されました。

 このアルバムはヨーロッパ公演の最後となる英国ロンドン公演の模様を収録したライブ盤です。より正確には6月30日と7月1日両日のアールズコートでのライブから編集されています。7月1日がツアー・ファイナルですから、ちゃんと終わりの挨拶も収録されています。

 公演はしっかりとトニー・ヴィスコンティによって録音された上に、全ツアー終了後となる1979年1月にはボウイによってミックス処理が施されていますから、アルバムとして発表するつもりがもともとあったのでしょう。「ステージ」が不満だったのでしょうか。

 ライブは2部に分かれており、第1部が「ワルシャワの幻想」に始まり、「ヒーローズ」へと続く「ロウ」「ヒーローズ」中心のセット、第2部は「ジギー・スターダスト」や「ステーション・トゥ・ステーション」という過去作中心のセットとなっています。

 「ステージ」ではこの順番が逆になっていましたが、悪評高く、CD再発時には本来の姿に戻され、さらに未発表曲が2曲追加されました。この全20曲に「ジーン・ジニー」、「サウンド&ヴィジョン」、「サフラジェット・シティ」、「レベル・レベル」を加えた24曲が本作品です。

 このうち「サウンド&ヴィジョン」は初演だとボウイがMCで語っています。曲順はほぼ「ステージ」改良版と同じですし、メンバーも全く一緒。こうなると当然どっちが良いのかという話になります。ざっと見た限りではこちらに軍配を上げる人が多いようです。

 バンドはツアー開始前に十分なリハーサルの時間がとれなかったそうですから、米欧ツアー終盤の方が演奏がこなれたということでしょう。エイドリアン・ブリューとカルロス・アロマーのギター、ロジャー・パウエルのシンセを前面にバンドとしての一体感が強まっています。

 特にアンコール3曲中の1曲「ステイ」でのギターとシンセのソロを含む演奏は鳥肌ものです。ボウイの歌声も若々しいですし、「ヤング・ミュージック・ショー」の記憶を探りながら、しみじみと耳を傾けるにはもってこいの良作だと思います。

Welcome To The Blackout (Live London '78) / David Bowie (2018 Parlophone)