エルヴィス・コステロの初期の曲の中で、私は断然「オリヴァーズ・アーミー」が好きです。コステロ特有の流れるようなメロディーに乗せたボーカルがカッコいいです。その魅力を最大限に発揮したのが「オリヴァーズ・アーミー」でしょう。コロコロ転がるコステロ節です。

 この作品はコステロの3作目、アトラクションズと一緒になってからは2枚目のアルバムです。この頃は新人バンドが雨後の筍のように出現しましたが、その多くは3枚目に苦しみました。失速していったバンドも多いですが、コステロはそのジンクスなど軽く吹き飛ばしました。

 発売時期はさておき、録音時期だと前作からわずか半年しか経っていません。あとからあとから曲が湧いてくるという状況だったのでしょう。あっさりと曲が作られているようで、それがいちいち充実しているのはまだ24歳、若さのなせる業だと思います。

 本作は全英チャートで2位を記録したばかりではなく、全米チャートでもトップ10に入るヒットになりました。もちろんこれまでの2作よりも売れています。この時期、多くの英国アーティストがアメリカで苦しんでいた中にあって、この成績は異例のことでした。

 前2作もそうでしたけれども、やはりコステロの音楽の背骨にはアメリカンなロックン・ロールがあり、それをパンク・ツイストを加えながらも比較的ストレートに打ち出していることが要因でしょう。しかも本作はパンク・テイストが薄らぎました。

 とはいえ、このアルバム発表直前の1978年11月には、初来日した際、銀座のど真ん中でトラックの荷台で演奏するという騒動を起こしています。ほんの15分で警官に制止され、反則切符を切られただけで終わりましたが、いかにもパンクを標榜した騒ぎでした。

 しかし、この騒動はよく考えるとパンクと対極にある気がします。あくまでプロモーションですし。コステロにはこのようにパンクを衣装としてとられている風味があります。外形的なパンクス。後に試されるさまざまなスタイルも同じようなアプローチが用いられている気がします。

 ともかく、本作は前2作に比べて、時代とともにパンク的な勢いは薄らぎ、コステロ本来の持ち味であるポップなテイストが前面に出てきて、ニュー・ウェイブ的ではありますが、コステロ的ポップがいよいよ全開になってきました。

 一方で、歌詞の世界はよりひねりが加わり、さらに過激になってきています。ビート・ロックのスタイルを極めたコステロ第一期の終わりであるとともに、コステロ節がひとまず完成を見た作品と言えます。この頃のコステロが一番好きだという人も多いのではないかと思います。

 収められた全12曲はまるで捨て曲がありません。曲の並びも極めて自然で、あっという間にアルバムが終わります。全英2位の大ヒットとなった注目の「オリヴァーズ・アーミー」はA面の3曲目という面白い位置を占めています。おやっと思わせる効果はあります。

 ジャケットはポストカード4枚を収めた変形折り込み型で、初回LPにはシングルやEPが付けられていました。何とも小憎らしいまでの自信です。腿を高く上げて我が道を歩むコステロがいよいよ本領を発揮しだした1枚だと言えます。

Armed Forces / Elvis Costello & The Attractions (1979 Radar)