前作「ファイアー」と並ぶ名ジャケットです。見開きジャケットの内側はさらに凄くて裸の女性が全身に蜂蜜を浴びている写真。これが1976年のグラミーでベスト・アルバム・カバー賞を受賞したというのですから、アメリカもなかなかやります。

 モデルさんはパナマ出身のプレイメイト、エスター・コルデットという女性で、この撮影でモデル生命を絶たれた上に、収録中に殺されたという都市伝説があります。この伝説には数々のバージョンがあり、それを検証するサイトもあります。もちろんフェイクです。

 あまりに素晴らしいジャケットと、叫び声が収録されている「ラヴ・ローラーコースター」がシングル・カットされて全米1位に輝いたことから、広まった伝説です。当時はまだインターネットもありませんから、人々の口から口へと伝えられていたと思うと感慨深いです。

 「ファイアー」の成功に気を良くしたオハイオ・プレイヤーズは、自信満々でニュー・アルバムに取り掛かります。出来上がった「ハニー」は全米1位にはなりませんでしたが、2位まであがり、プラチナ・ディスクを獲得しました。

 この作品はオハイオ・プレイヤーズの最高傑作と言われることも多く、一般に、彼らのキャリアの頂点だと観念されています。4チャンネル・ミックスも発表されており、レコード会社としても随分と力が入っています。

 オハイオ・プレイヤーズは、後にファンカデリックで活躍するウォルター・ジューニー・モリソンを中心に、シンセぐちゃぐちゃの「ファンキー・ウォーム」をヒットさせたこともありました。しかし、前作や今作の頃にはボーカル&インスト・グループとしての顔を確立しています。

 すっきりとした分かりやすい王道ファンク路線の、幾分ポップな色合いをもったダンサブルなサウンドで大ブレイクしたわけです。本作でも、シュガーフットことルロイ・ボナーの豪快なボーカルを中心に鮮やかなコーラスを擁するファンク・サウンドが炸裂します。

 大ヒット曲「ラヴ・ローラーコースター」は今回は冒頭ではなく、B面の真ん中に置かれました。レッド・ホット・チリ・ペッパーズがカバーしたことで、時代が下っても人気がある彼らを代表するファンク・チューンです。確かにローラーコースターです。絶叫大作。

 アルバムの始まりは、ねっとりと聴かせる甘いバラードの表題曲です。これは意表をつきました。これも彼らの持ち味とは言え、華麗なコーラス・ワークが全開です。これと対をなすのがB面冒頭の「スウィート・スティッキー・シングス」です。思わせぶりですがハニーですね。

 こちらもファルセットを駆使したバラード調の名曲でシングル・カットされてソウル・チャートで1位になりました。この曲ではサックスがカッコいいです。これも甘いねばねばしたものなんでしょう。この曲のサックスに限らず、ピアノやら上物サウンドが今回はより輝いています。

 これにはエンジニアのバリー・モラースの存在が大きいようです。前作に比べると、ポップ度が増している分、極上のサウンド・メイクが際立つようになったのでしょう。ジャケットの蜂蜜は結構さらさら度が高い。ねばねばとさらさらのバランスがとれた名作です。

Honey / Ohio Players (1975 Mercury)