実家の裏山には竹藪がありました。暗い竹藪でしたけれども、風がわたると何ともいえず風流な感じがして、東アジアの血を感じたものです。竹はアジア中心の植物で、欧米には見られません。白人世界ではわずかにオーストラリアに見られるのみです。

 ザ・バンブーズはオーストラリアのファンク・バンドです。調べてみると80年代には同じ名前のロック・バンドが存在したようで、オーストラリア人の竹好きが発覚しました。西欧にはないところが良かったのでしょうか。

 いつの頃からか、オーストラリアやニュージーランドはファンクの聖地になっています。どうして、南太平洋にファンクなのかは分かりませんが、数々のファンク・バンドが登場しており、ザ・バンブーズもその一つです。

 2001年にメルボルンで結成されたザ・バンブーズはニュージーランド生まれのランス・ファーガソンを中心にしたバンドです。このアルバム時点では、ギター、ハモンド・オルガン、ドラムにベース、トランペットとテナー・サックスといういかにもファンクな編成です。

 彼らは英国ブライトンにて、クアンテックなどで有名になるインディーズ・レーベル、トゥル・ソーツとたまたま出会ったことから、同レーベルと契約し、2006年にデビュー・アルバムを発表します。この作品はそれに続くセカンド・アルバムです。

 彼らのサウンドは実に折り目正しいファンクです。ジャケット写真を見ればわかる通り、スーツにネクタイという出で立ちがサウンドにも染み出てきています。とても折り目正しい、ヒューマン・マシーン的で歯切れの良いファンクが見事です。

 バンブーズにはボーカリストがいませんが、この作品では全12曲の半分にゲスト・ボーカルを招いています。レーベル・メイトのUKソウル歌手のアリス・ラッセルや、オーストラリアやニュージーランド出身のボーカリストが招かれています。

 さらに彼らの米国でのレーベル・メイトとなるヒップ・ホップ・アーティストのオメガ・ワッツが参加してラップを披露しているところが新しいところです。カラカラのファンク・サウンドに乗せたラップは、ドラムンベースと絡むヒップホップのようでカッコいいです。

 カバー曲が二曲、うち一曲はレーベル・メイトのブロークン・キーズの「ザ・ウィッチ」、もう一曲はデオダードの「ツァラトゥストラはかく語りき」をサンプリングしたマックス・セドグレイの「ハッピー」です。グレイテスト・ファンク&ソウル・バンドらしい勢いのあるカバーです。

 彼らのサウンドのルーツは60年代終わりから70年代初めにかけてのむき出しのファンクです。揺らぎのある汁が滴るファンクではなく、バンブーを叩いたような乾いたファンク。そんなサウンドを現代に展開したのが彼らの持ち味です。

 最後の曲だけはクアンテックのスタジオでの即興演奏を収めたものだと思われます。全員が作曲者にクレジットされており、そこまでの展開とは異なる、さらに解放されたサウンドです。ファンク一筋の彼らによる無骨な即興音楽は一番の聴き物です。

Rawville / The Bamboos (2007 Tru Thoughts)