エドガー・ウィンターはいち早くシンセサイザーに取り組んだり、首から重いキーボードをぶら下げてライブに臨んだりとキーボーディストとしての活躍が目立ちますが、本人は自分はアルト・サックス奏者だと考えているそうです。

 そのサックスの腕を買われて、エドガーはミートローフのモンスター作品「地獄のロックライダー」やダン・ハートマンの「インスタント・リプレイ」などへの客演を始め、あちこちのセッションで引っ張りだこでした。忙しかったことでしょう。

 この作品はホワイト・トラッシュのリユニオンから2年、久しぶりのソロ・アルバムです。名前もシンプルに「ジ・エドガー・ウィンター・アルバム」で、ジャケットには毛皮をはおったエドガー・ウィンターのゴージャスな姿が写っています。

 これでどんな音が出てくるかというと、なんとディスコです。これまでは、ファンキーを追及するにしても、ディスコ調はダン・ハートマンの十八番でした。それがここへきて、見事なディスコ・アルバムの登場です。毛皮のコートはゴージャス・ディスコの象徴なのでしょう。

 多分にダン・ハートマンの「インスタント・リプレイ」に触発されたのでしょう。やってみるととても気持ちが良かった。それをすぐにやってみるところがエドガー・ウィンターの真骨頂です。ブルースにこだわるギタリストの兄とは違います。

 エドガーは60年代、70年代について、とても自由な時代だったと懐古しています。多くはバンドの自主性に任されていて、3、4曲あればスタジオ入りしてアルバムを作ってしまっていたそうです。それが音楽に魔法をかけたんだと。

 この作品はフィラデルフィアのシグマ・サウンド・スタジオで制作されました。フィリー・ソウルのメッカであるこのスタジオの魔法が存分にかかっているわけです。音の響きがとてもフィリー・ソウルっぽく上品なことこの上ないです。

 参加ミュージシャンはこれまでのアルバムには全く見られない人々ですから、シグマ・スタジオのセッション・ミュージシャンかとも思いますが、情報がなくてよく分かりません。落ち着いたソウルフルな演奏がとても気持ちが良いです。

 全編ディスコかと思いきや、ホワイト・トラッシュのデビュー作からエドガーの代表曲である「ダイイング・トゥ・リヴ」が再録音されており、こちらはほとんどオリジナルと変わらないアレンジのバラードです。スローなディスコ曲ではなく、ロック寄りのバラードです。

 アルバム最後の「フォーエバー・イン・ラヴ」もバラードですが、こちらは多少はディスコ寄りです。踊れないことはない。そうしてみると「ダイイング・トゥ・リヴ」の特異性が分かります。いい曲なんです。いい曲なんですけれども。何故ここに。

 エドガー・ウィンターによるディスコ・アルバム、フィリー・ソウル・アルバムとして、捨てがたい魅力を放っています。しかし、ちっとも売れませんでした。素敵なサウンドなのに、うまく時代と噛み合いません。ディスコでのブレイクはなかなか難しいものです。
 
The Edgar Winter Album / Edgar Winter (1979 Blue Sky)