エドガー・ウィンターの出世作となった作品です。彼のバンド、ホワイト・トラッシュの2枚組ライブ・アルバムで、これが全米トップ40に入るヒットとなりました。この頃の全米チャートは権威がありましたから、掛け値なしのヒットと言えます。

 ジャケットにはエドガーとリード・ボーカルのジェリー・ラクロワの写真が大きく写っています。裏ジャケットの写真はリック・デリンジャーとエドガーの兄ジョニーの同様の構図の写真で、普通の人はこちらが表にあってしかるべきだと思うフォトジェニックぶりです。なんか面白い。

 ホワイト・トラッシュのメンバーを前作と比べると、ベースとギターが交代し、トランペットが二人加わって三人になりました。ギターはプロデュースも務めるリック・デリンジャーが弾きまくることになりました。分厚いホーンとキラキラ気味のギターが特徴と言えます。

 このライブは二枚組で、それぞれの面に特徴があります。まずはA面。前作からの曲「セイヴ・ザ・プラネット」で始まるホワイト・トラッシュらしいサウンドで、ここは3曲すべてジェリー・ラクロワがリード・ボーカルをとっています。ラクロワ・サイドと言えます。

 続くB面はデリンジャー・サイドです。まずはデリンジャーのオリジナル曲「スティル・アライヴ・アンド・ウェル」で始まり、チャック・ベリーのカバー「バック・イン・ザ・USA」へと続きます。デリンジャーがリード・ボーカルをとり、ギターをバリバリ弾きまくります。

 B面三曲目は「みんなが俺に兄貴はどうしたって聞くんだ」というエドガーのMCに続いてジョニー・ウィンターが登場し、デリンジャーの代表曲「ロックン・ロール・フーチークー」を披露します。歌もギターもジョニー。さすがは百万ドルのギタリスト、空気がまるで違います。

 この時、ジョニーはヘロイン中毒で入院しており、医者の許可をもらっての登場だった模様です。それなら「スティル・アライヴ・アンド・ウェル」もありだったかもしれません。ジョニーは、後に同曲をタイトルとしたアルバムまで出していますし。

 C面はいよいよアルバムの白眉となる「タバコ・ロード」17分です。ソロ・デビュー作でジョニーのバンドと演奏していたあのブルース・カバーです。ここでは少なくとも5人のホーンを中心に熱い演奏を繰り広げます。デリンジャーの無伴奏ギター・ソロも堪能できます。

 ブルースがエドガーの音楽の奥底に流れていることがよく分かります。遊びの部分も多く、このバンドの底力が現れていると言ってよいでしょう。ソロ・アルバムとはまるで異なるゴージャスなサウンドです。

 最後はソウルの殿堂アポロ・シアターでのライブなんでしょう。遅刻した彼らをネタにしたMC「黒人はいつも遅刻すると言われるけど、ホワイト・トラッシュはどうでしょう」での登場です。そして、徹底的にファンキーな「クール・フール」で半笑いだった観客の度肝を抜きます。

 このD面はファンキー・サイドです。ソウルの殿堂で最高にファンキーな曲を演奏する。そして、デッドでおなじみ「ターン・オン・ユア・ラヴ・ライト」で締めます。息をもつかせぬ2枚組。ロックが勢いのあった時代の熱い一枚です。

Roadwork / Edgar Winter's White Trash (1972 Epic)