「100万ドルのギタリスト」と呼ばれたジョニー・ウィンターとその弟エドガー・ウィンターはとても仲の良い兄弟でした。最初のバンドも兄弟で組んでいますし、ジョニーはCBSと破格の契約をした後も、何かとエドガーを前に出すように盛り立てます。

 そのかいあって、1970年、エドガー・ウィンターのソロ・デビュー作となる本作「エントランス」がエピック・レコードから発表されました。もちろんジョニー・ウィンターが全面的にバックアップしており、ほとんどの曲は二人の共作になっています。

 デビュー作らしく、裏ジャケにはバイオグラフィーが記載されています。それによれば、エドガーは1947年12月28日テキサス生まれ、クラシック・ピアノから音楽人生をスタートさせ、オルガン、サックス、ドラム、ベースなど数え切れない楽器を習得します。

 本作では、さまざまな音楽スタイルをできる限り融合させることを目指したため、みんなには複雑すぎたかもしれない、寄せられる批判が楽しみだ、という若さゆえの挑戦的なコメントもバイオに記載しています。とにかく気合が入っています。

 エドガーは自分の音楽に共通するのはブルースだとしています。ブルースを中心にジャズ、クラシック、ロックをフュージョンすることが本作のコンセプトなんだけれども、ほとんどの人は気づいていないだろうとも語っています。クラシック以外はよく分かりますが...。

 アルバムのA面は名曲「ウィンターの夢:エントランス」から始まり、「リエントランス」で終わる6曲が25分間切れ目なく続きます。これをエドガーは「一種のシンフォネット」だと説明しています。それぞれの曲が独立しながらも混然一体となっていて、確かにシンフォニーです。

 曲は5曲が兄弟の共作、1曲だけエドガー単独作です。ジョニーはここまで全面的にバックアップしていますが、演奏のクレジットはハーモニカだけです。ギターを弾いて、弟を脇に押しやりたくないという気づかいを感じます。

 しかし、B面の冒頭の1曲、ブルースの名曲「タバコ・ロード」はジョニーのプロジェクト「ザ・プログレッシヴ・ブルーズ・エクスペリメント」がバッキングを務め、その中ではジョニーもギターを弾いています。さすがに迫力が違います。

 その後は元に戻って、エドガーのバンドによる演奏が4曲続きます。こちらは曲間に切れ目が普通に入ります。ここでも2曲は兄弟の共作、2曲がエドガー単独作です。本当に仲の良い兄弟です。ここはジョニーは本当にギターを弾いていないんでしょうか?

 後のエドガーはブルースをベースにしつつもポップな色彩が強くなりますが、この作品ではブルース色、ジャズ色があからさまです。キャノンボール・アダレーに影響を受けたというサックス、そしてジャジーなオルガン。ジョニーに突然振られて開眼した土の香りのするボーカル。

 進む道は分かれることになったにしても、エドガーもブルースの神様に愛されたことは間違いありません。この時代ならではのブルース・ロックが胸に染みます。アルビノの長所を生かした美しいジャケットに相応しい見事なサウンドによるデビュー作です。傑作です。

Entrance / Edgar Winter (1970 Epic)