WACK系のアイドルとしては元祖にあたるBiS、ブランニュー・アイドル・ソサエティー、新生アイドル研究会の再始動後の2枚目のアルバムです。再始動とはいっても、元祖メンバーは実質的なリーダーだったプー・ルイだけです。プロダクション・チームはもちろん同じですが。

 BiSは女性5人組で、それぞれが奇抜な名前をまとっています。プー・ルイ、アヤ・エイトプリンス、キカ・フロント・フロンタール、、ゴ・ジーラ、ペリ・ウブの5人です。エイトプリンスは何でも八王子出身だそうで、まあそういう名前です。

 となると断然気になるのはペリ・ウブです。あのクリーブランドの変態バンド、ペル・ウブか、はたまたその元ネタの「ユビュ王」か。ちょっと調べただけでは分かりませんでしたが、どっちにしてもかっこいい名付けです。さすがは人生楽勝担当と名乗るだけのことはあります。

 元祖BiSは2014年7月に解散していて、そのほぼ2年後の2016年7月にプー・ルイ以外の4人をオーディションで選んで再始動します。そして、その4か月後には過去の人気曲の再録に新曲を交えたアルバムを発表しています。

 そのわずか3か月後に発表されたセカンド・アルバムがこの「RE:ステューピッド」です。今回は全曲新曲です。全10曲で30分強ですから、アルバムとしてはちょっと収録時間が短いですけれども、前作から3か月ということで大目に見ましょう。

 注目すべきは10曲中7曲がメンバーの作詞となっているところです。キカとペリ・ウブが1曲ずつ、プー・ルイが2曲、ゴ・ジーラが3曲です。アヤ・エイトプリンスは採用されなかったので日本語を勉強中だとインタビューに答えていました。

 奇を衒った歌詞はほとんどなくて、比較的ストレートにそれぞれの世界観を表現しています。とても好感が持てる若い娘の歌詞だなあとしみじみとしています。そんな中ではペリ・ウブの「ぎぶみあちょこれいと」のダークな世界が気になりました。

 楽曲はWACKの例にならって松隈ケンタが作り、スクランブルズが編曲と演奏を行っています。BiSHやギャングパレードに比べると、アイドルらしいアイドル路線になっていて、さすがは新生アイドル研究会の看板に偽りはありません。

 基本的にはバンド演奏によるロックです。ギターばりばりですし、高速ドラムが目立つ、カッコいい演奏です。BPMが大きくてもドラムン・ベース方面ともメタル方面とも異なって、あくまでいわゆるロックであるところが面白いです。

 そんなサウンドの上に、お騒がせユニットにしては王道のアイドル歌唱がのってきます。それをぴたりと合わせる力量には敬服いたします。もうどんどん曲想が湧いてくるんでしょうね。スクランブルズの仕事ぶりには驚きます。

 非常階段と共演したりしたという元祖の面影はあまりなく、アートワークはおどろおどろしいものの、再始動BiSはアイドル路線まっしぐらです。これはこれで良いと私などは思うのですが、結局この後BiSは頻繁にメンバーの入れ替えが起こるようになりました。

Re: Stupid / BiS (2017 Tsubasa)