ユートピアの通算4枚目のアルバムですが、ようやくメンバーが落ち着いてからのユートピアとしては2枚目のアルバムになります。邦題は「悪夢の惑星」です。原題は「何てこったい、違う惑星に着いちまったぜ」とでも訳せますから、まあ妥当な邦題でしょう。

 しかし、その邦題が連れてくるイメージとはまるで異なり、ベースのカシム・サルトン曰く「パワー・ポップ」の作品集になりました。1977年ですから、英国ではパンクからニュー・ウェイブの時代です。ニュー・ウェイブ的なポップスは当時確かにパワー・ポップと呼ばれていました。

 サルトンによれば、彼が加入した最初のアルバム「太陽神」を終えて、バンドとして歩むべき方向を決める時期がやってきました。結論は、プログレッシブ・ロック的な曲をよりポップにしていくべく皆で頑張るというものでした。

 その結果、このアルバムは前作のようなコンセプト・アルバムではなく、全曲が3分から4分の強力な曲ばかりとなり、より幅広い聴衆にアピールするものとなりました。それを称して「パワー・ポップ」のアルバムです。

 ただし、多くの聴衆に向けられたアルバムなのに、裏ジャケットのポートレートはとてもそうは見えません。パスポート写真のような四人それぞれの顔写真は、どう見ても人相が悪く、囚人のID用写真のようです。

 英国人ならばアイロニーに満ちたと評されるところですが、根っからの米国人であるユートピアですから、恐らくは大した考えなしにやったことでしょう。この感覚はサウンドにも現れています。どこかちぐはぐなんです。

 ここに収録された12曲はいずれもポップな感覚満載でヒットチャートを賑わせてもよさそうに思えるのですが、そうはならない。アルバム全体も売れなかったわけではありませんが、全米77位どまりです。何か変。

 トッド・ラングレンはプロデューサーとしては大ヒット作を連発していますが、こと自分のバンドになるとチャートを昇りきらない。それを「未来から来た」とか「5年から10年先のサウンド」だとか表現することでファンは良しとしてきました。

 この作品などその典型です。今聴いても確かにそれほど古びた感じはありません。しかし、当時から見た未来の若者に受けるとも思えません。要するにポップスのメイン・ストリームから少し外れたところにある音楽です。

 それは演奏にもあるのでしょう。本作からの名曲「愛こそ証し」は、パワーに満ちたバラードの名曲で、シングル・カットされましたがチャートインはしていません。しかし、後にイングランド・ダン&ジョン・フォードがカバーして1979年にヒットしました。カバーされるとヒットする。

 アルバム全体がキラキラとしたパワー・ポップで、四人がそれぞれリード・ボーカルをとり、見事なコーラスを聴かせるバンドならではの輝きに満ちています。いいアルバムだとしみじみと思ったりもするのですが、すっと右から左へ流れていきます。悩ましいアルバムです。

Oops! Wrong Planet / Utopia (1977 Bearsville)