AC/DCの結成は1973年のこと、オーストラリアのシドニーで産声を上げました。中心はマルコムとアンガスのヤング兄弟で、ようやくファースト・アルバムを発表した1975年くらいからはメンバーのラインナップも安定して怒涛の進撃が始まりました。

 伊藤政則氏はライナーにて、彼らは当初グラム・ロックンロールあるいはスウィートやスレイドあたりの路線を目指していたのではないかと書いています。ハード・ロックはともかく、ヘビー・メタルに分類するのは違和感のある彼らですから、これは当たっていると思います。

 このアルバム「地獄のハイウェイ」は「AC/DCの存在を全世界に知らしめた出世作」です。スタジオ作としては6作目に当たり、全米17位、全英8位となる大ヒットを記録しました。オーストラリア国内から徐々に世界に進出し、ここで一気に開花しました。

 しかし、同時にリード・ボーカルをとっていたボン・スコットが本作品発売直後に急死してしまいますから、悲劇のアルバムにもなってしまいました。ヤング兄弟よりも年長で何かとバンドを引っ張っていたスコットだけに残念です。

 AC/DCは次作「バック・イン・ブラック」が5000万枚を超えるウルトラ・メガ・ヒットになりますから、それと比べられるとどうしても分が悪いのですが、どうしてどうして本作品は大傑作です。AC/DCのサウンドはここに完成したと言っても良いと思います。

 1973年に結成して、1979年にこのアルバム発表。この間、英国ではパンクの嵐が吹き荒れ、新奇なスタイルを追及するニュー・ウェイブへとつながります。米国ではディスコにAORとロックの世界も多彩になっていきました。

 しかし、そんな中でAC/DCはまるで変わらない。ギターのリフを中心にして、「色気と野性味を兼ね備えた」ボン・スコットのハイ・エナジー・ボーカルがシャウトする単純明快なロックを追及してここにほぼ完成をみました。

 アナクロニズムの権化だといわれ、それもロック後進国のオーストラリアだからしょうがないかと軽く扱われていたAC/DCがその愚直なまでにまっすぐなロケンロールでついにブレイクを果たしたわけですから世の中面白いものです。

 その後の彼らの大活躍ぶりを見るにつけ、「動かざること山の如し」「徹頭徹尾ロケンローの漢道!」の潔さはいかに大事なことであるかを思い知らされます。ブギーあるいはブルースを基調としたポップさを漂わせたシンプルなロケンローは凄い。

 タイトル・トラック「地獄のハイウェイ」はイントロのギターからしてAC/DC節全開のご機嫌な名曲です。そこに続く楽曲も同じスタイルですから気持ちがいい。キーボードも使わず、ギター二本とリズム隊、そしてボーカルが弾けまくります。

 ボン・スコットのボーカルはハスキーなハイトーンで色気がむんむん漂います。これが最後になってしまったのは返す返すも惜しいことです。アンガス・ヤングのギターによく似あう腹の座った素晴らしいボーカリストでした。名作です。何をかいわんや。

Highway To Hell / AC/DC (1979 Atlantic)