ユーチューブで「ステイ」を視聴すると、続けてミートローフの「愛にすべてを捧ぐ」が再生されました。両曲の間には1年半以上の時期のずれがあるのですが、この頃のイギリスでのドラマチックな大ヒット曲として続けて再生されることは極めて納得のいくことです。

 シェイクスピアズ・シスターの「ステイ」はイギリスでは8週間も連続して1位を記録しました。この頃、イギリスで生活していましたから、この曲はそれこそお腹いっぱい聴きました。ドラマ仕立てのMVは脳裏に強く強く焼き付いています。

 シェイクスピアズ・シスターは大人気だったバナナラマを辞めたシボーン・ファヘイのソロ・プロジェクトとして始まりました。やがて、プロデューサーのリチャード・フェルドマンの縁で米国人女性マーセラ・デトロイトが加わり、女性デュオとなりました。

 マーセラは本名をレヴィといい、エリック・クラプトンの「レイ・ダウン・サリー」の共作者として有名です。そのエピソードだけで実力派であることが分かるというものです。フェルドマンもクラプトンと共作していますから、二人は知り合いだったようです。

 この作品は彼女たちの代表曲となる超有名曲「ステイ」のピクチャー・シングルCDです。カップリングされているのはファースト・アルバムからのシングル曲「ダーティ・マインド」と「ラン・サイレント」の2曲です。

 そして面白いことに、「ステイ」を含む新作アルバム「ホルモナリー・ユアーズ」から6曲のさわりをメドレーで演奏した「抜粋」が入っています。これは何とも限定盤ならではの荒業です。こんなCD初めてです。

 やはり「ステイ」は名曲です。マーセラがハイトーンで瀕死の恋人に向かって♪ステイ・ウィズ・ミー♪と切々と歌い上げると、死神に扮したシボーンがハスキーな声で無駄じゃ無駄じゃと意地悪く歌って、二人が恋人を取り合うという筋書きです。

 二人のボーカルの対比が際立っていて、すっかりドラマにからめとられていしまいます。さすがは8週連続1位なだけのことはあります。彼女たちにとっても最大のヒット曲となりました。この路線はなかなか連続してヒットを出すのは難しいです。ミートローフと同じです。

 もとはシボーンのソロだったシェイクスピアズ・シスターです。「ステイ」でのリード・ボーカルは明らかにマーセラですし、MVでもマーセラが主人公です。ですから、シボーンは当初この曲をシングルとすることに反対していました。

 しかし、これが大ヒットしてしまいますから、シボーンは面白くない。シボーンはツアーをキャンセルするなど不安定になっていきます。そして、マーセラ独りが出席した授賞式のステージで、突然別れのメッセージを代理人に代読させるという最悪の事態が発生してしまいました。

 マーセラの気持ちを考えると胸が潰れます。以来、二人は言葉を交わしていないそうです。そんな顛末を聞けば聞くほど、「ステイ」の凄味が増していきます。恐ろしい曲、呪われた曲。やはり神様を歌ったからでしょうか。

Stay / Shakespears Sister (1992 London)