天才女子高生もすっかり大人になりました。寺久保エレナの新作は2018年3月発表、彼女も25歳です。25歳にして早くも5作目、順調にキャリアを積み重ねています。このままがんがん活躍して欲しいものです。

 ニューヨークを活動拠点とする寺久保エレナですが、日本国内でも実力派日本人ミュージシャンを集めてレギュラー・グループを結成しています。その寺久保エレナ・カルテットの最初のツアーは2017年6月のことでした。

 この作品は、そのレギュラー・カルテットによる作品で、寺久保のアルバムとしては初めて日本人だけで演奏された作品です。国境のことに言及するのも無粋な話ではありますが、5作目にして初めてですから、素直に「おおっ」と思っておきましょう。

 メンバーは、寺久保に加え、ピアノに「私の大好きなピアニスト」片倉真由子、ベースに東京工大院卒のジャズベーシストで「素晴らしいプレイヤー」金森もとい、ドラムに「演奏技術はハイレベルで本当に素晴らしいドラマー」高橋信之介の4人です。

 こうして集まった実力派メンバーは当然のことながら寺久保よりもかなり年上です。しかし、ここがジャズのいいところですね。親よりも年上の世界の超一流と共演してきた寺久保ですから、リーダーと決めたらリーダー。見事なバンドリーダーぶりです。

 収録された曲はボートラを含めて全12曲で、そのうち寺久保のオリジナルが4曲です。カバー曲は、チャーリー・パーカーやジャッキー・マクリーンの曲、パーカーが好んで演奏した曲など、これまで以上にビ・バップ色が強いです。

 さらに、ホレス・シルヴァー、キャノンボール・アダレイと来て、皆さんが楽しめるようにと「星に願いを」とスティービー・ワンダーの「サンシャイン」です。カルテットは、こうした楽曲を若々しくぴちぴちと鮮度高く演奏しています。とにかく聴いていて見事に楽しいです。

 寺久保自身、「私はこれからも、先人が残してくれたジャズのスピリットを受け継いでゆこうと思います」と決意を語っています。これまで同様に、剛球一直線、ど真ん中をめがけて、ぽんぽんとほってくる演奏です。小細工は一切なく、あくまで伸びやかなサックスです。

 オリジナル曲ではまずはアルバム・タイトルともなった「リトル・ガール・パワー」。「女性にもっと自信を持ってもらいたい、自由を与えて欲しい、そして輝いて欲しい」という願いが込められています。どんどこなるリズムにファンキーなピアノで始まるカッコいい曲です。

 ボートラ収録は北海道テレビ放送から依頼された、同局開局50周年記念のテーマソング「ハイタッチ」です。ボーカル入りもあるそうですが、ここはカルテットによる演奏です。カリプソ・タッチの軽やかな曲で、とてもテーマソングらしいです。

 前作が第二の出発だったとすれば、この作品はどうなるのでしょうか。レギュラー・カルテットを得て日本でも活発に活動し、自身はニューヨークを拠点に南米をツアーしたりと世界を股にかける活躍ぶり。第二の出発後もめでたく高速巡航に入ったということです。天晴。

Little Girl Power / Erena Terakubo (2018 キング)