二つの事務所の設立3周年を記念して発表されたアルバムです。WACKはマネジメント、スクランブルズは音楽プロダクションということなんでしょうか、よく分かりませんが、両者はとにかく渡辺淳之介と松隈ケンタによるプロジェクトです。

 所属アーティストはアイドル4組、BiS、BiSH、ギャング・パレード、エンパイヤで、メンバーは全員で25人、このアルバムには全員が参加しています。インディーズっぽいイメージですが、レコード会社はエイベックスですし、とにかく勢いのある集団です。

 「池尻大橋のスタジオで出会った渡辺淳之介と松隈ケンタの僕たちがやりました。色んな人を怒らせてきました、大人のみなさん感謝しています。」というのが添えられたキャッチコピーです。確かにここはお騒がせが多い。本作品でも遺憾なくお騒がせしています。

 一曲目が最もお騒がせで、渡辺と松隈がBiSHのメジャー・デビュー前の楽曲「スパーク」を歌うのですが、このPVがお葬式です。渡辺が棺桶に横たわり、女の子たちは全員喪服。これを着せたかっただけなんじゃないかと思いますが、お騒がせではあります。

 以降は、4組25人のメンバーがさまざまな組み合わせで歌います。BiSH、BiS、ギャンパレの有名3曲、それに松隈が中川翔子と柴咲コウに提供した曲はシャッフル・ユニットで、BiSの執念の代表曲「nerve」は全員で歌います。

 エンパイヤのデビュー曲とセイント・セックスなる選抜ユニットの曲メンバーによる楽曲は先行して発表されましたが新曲です。エンパイヤはWACKとエイベックスの共同プロジェクトとして誕生したグループで、デビューだけあってやたらと初々しいです。

 一方、セイント・セックスは、WACKの歴史そのものと言えるプー・ルイ、BiSHからはアイナ・ジ・エンドとアユニD、ギャンパレからはヤママチミキ、ユメノユア、そしてカミヤザキとアヤ・エイトプリンスの7人からなるユニットで、総力を挙げた力強い楽曲です。傑作かも。

 メンバーをシャッフルすると言えば、ハロプロの恒例行事でしたけれども、それとはまるで雰囲気が違います。楽曲の系統も違いますが、アイドルとしてのあり様が根本から違います。さすがはお騒がせな人たちです。やっぱりこっちはパンク。

 このアルバムには総選挙の投票券も入っています。これは結果がもう出ていて、一位はセントチヒロ・チッチ、二位はアイナ・ジ・エンド、三位はアユニ・D、いずれもBiSHでした。AKBとは票数が3ケタ違いますが、これはこれで盛り上がりました。

 25人の中には何人かとても歌の上手い人がいます。私としてはアイナ・ジ・エンドの歌がやはり気になりました。特に最後に収められた松隈ケンタのBuzz72+によるメジャー・デビュー曲「屋上の空」をソロで歌うアイナは最高です。

 何だか最後はこうしてストレートでエモーショナルな楽曲で締めるあたりが、いかにも3周年記念っぽいです。男二人の「スパーク」を除けば、変なギミックは一切なく、正面から丁寧に楽曲を歌い上げる彼女たちの姿勢がいいです。立派なアルバムになりました。

Wack & Scrambles Works / VA (2017 Avex)