特にデビュー作が売れたというわけではありませんが、モノクローム・セットは怒涛の勢いでセカンド・アルバムを発表しました。ヴァージン傘下のディンディスク・レーベルも出来たばかりですから、とにかく前向きです。

 一方、バンドの中心人物ビッドは当時も今もこの作品を全然好きじゃないと言っています。お金が必要だったから急いだけれども、まだスタジオに入るだけの曲も準備できていなかったと述懐しています。しかし、そういうアルバムこそファンに愛されることが多いものです。

 デビュー作に比べると、こちらのアルバムの方が人気が高いようです。前作のブルンディ・ビートはなくて、もっとしゅっとしたアルバムになっていますから、ネオアコの元祖的な見方をする方にとってはごくごく自然に受け止められるのでしょう。

 ただし、アルバム・ジャケットは断然前作の方がいいです。このイラストも捨てがたい魅力はあるのですけれども、まるで方向が異なっているので当時から私は戸惑いをもって見つめておりました。ちょっとエッチだし。

 ビッドはどうやらプログレが好きだったようです。しかし、プログレの人たちはミュージシャンとしてうますぎて、とても自分の目標にならないと考え、ギターの師匠に選んだのはルー・リードだったといういことです。言われてみれば、ルーの曖昧ギターの照り返しが見えます。

 前作同様、レスター・スクウェアとビッドのギターにアンディ・ウォレンのベース、JDヘイニーのドラムという構成は変わりませんが、今回は全員の楽器のクレジットにエトセトラが加わりました。これからも分かる通り、音の種類が増えました。多彩な音になっています。

 飄々としたユーモラスな楽曲をタイトな演奏で聴かせるところも前作通り。やはり二枚目となってスタジオの使い勝手もわかったでしょうから、随分とこなれた印象です。目玉となるシグネチャー・ソングはありませんが、アルバムとしてのまとまりは格段にあります。

 ジャケ裏には、「このアルバムが家にあるからには、二人は仲間、四人はパーティー。カーペットを巻いて、電気を消し、炎の輝きで踊りましょう。モノクローム・セットがダンス・ホールの喧騒とはかけ離れたあなたのための音楽をお届けします。」と書かれています。

 踊れる音楽には違いないけれども、大勢で踊るのではない。ポップなことこの上ない明るいサウンドは部屋でこじんまりと聴くのに適しています。彼らの音楽を表現して見事です。軽いのに重い。モノクローム・セットならではの音楽です。

 ビッドの曲作りもますます自由です。核戦争を題材にした歌なのにひねくれポップな「アポカリプソ」、自分の名前や5番目のメンバー、映像作家のトニー・ポッツを題名に入れた曲、フランス語の単語を意味なく並べた「RSVP」。フランス人は深い意味を探し当てたそうです。

 ギターの逆まわしやら、スピード感あふれる一癖も二癖もある曲ばかりで構成されたアルバムはファンも多いですけれども、やっぱり大して売れませんでした。しかし、偏愛するファンは後を絶たず、この作品もいつまでもその魅力を放ち続けることになりました。

Love Zombies / The Monochrome Set (1980 Dindisc)