まじですか。話題のシングル「ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥ」のPVのユーチューブでの再生回数は今日現在で8億回を超えています。ただひたすら凄いことです。わずか5か月の間にこれですから、35億も夢ではないかもしれません。

 インターネットのおかげでスーパースターの寡占状態はどんどん進んでいますが、ここまでとは凄い。テイラー・スウィフトの圧倒的な人気はプロレス的なヒール役カニエ・ウェストを軽々と超えています。ねじ伏せましたね。

 テイラー・スウィフトの6枚目のアルバムは「レピュテーション」と題され、数々のゴシップ記事を透かして挑発的なテイラーの姿とともに発表されました。モノクロのジャケットが効果を100倍に高めています。ただならぬ雰囲気です。

 そしてブックレットは檄文で始まります。「私が人々について学んだこと」。「誰かのことを分かっていると思っていても、実際それは、その人がこちらに見せようと思っている姿だということ」。「あとは評判が出回るだけ」。意味するところは実に深いです。

 可愛らしいお人形さんのようだったテイラー・スウィフトも今や戦うアーティストとして最前線に立っています。もはやこういう言い方をしてしまう自分がいかにセクシストだったか思い知らされるテイラーのウォリアーぶりです。マドンナに続くのは彼女でした。

 #MeToo運動も彼女の戦いを先駆としています。「女性がちゃんと声を上げられることを示すことが目的」のセクハラ訴訟を戦い、1ドルの賠償金でさえ、勲章に変えてしまう力強さは圧倒的です。手放しで礼賛したいと思います。

 プロダクション・チームは前作同様のマックス・マーティンとシェルバック組が半分、前作にも少し係わっていたジャック・アントノフが半分です。しかし、サウンドは前作の明るい調子からどすが効いた重めのサウンドへと変化しています。

 先行シングル「ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥ」は、なんと90年代の変な二人組ライト・セッド・フレッドの「アイム・トゥー・セクシー」のフレーズを使用して、♪私は賢くなった♪とじっとりと歌います。元歌の換骨奪胎ぶりが凄いです。

 全体にほどよく最先端の音楽を取り入れて、とてもよく出来たサウンドになっています。それぞれの楽曲も非の打ちどころがない。これは彼女クラスのスーパースターにのみ許される類の堂々たるサウンドだと言えます。大きな冒険が期待されていない。

 カントリー・フレイバーが無くなったと言われますけれども、彼女の書く歌詞は言葉が多く、それがヒップホップとは異なる説明的な調子なので、演奏さえ差し替えればカントリー調だと思いますがどうでしょう。メロディーの癖がテイラーらしく、それがカントリー的。

 ともかくどんどん逞しくなって今や堂々たるスーパースターになったテイラー・スウィフトの絶頂を記録したアルバム群の一つというにとどまらず、良くも悪くも2017年の世界をすべて記録した歴史資料として後世に残っていくアルバムです。

Reputation / Taylor Swift (2017 Big Machine)