初回限定盤を買わなかったことを後悔しました。添付されていたDVDには今ではお目にかかれない貴重なバージョンのPVが収録されていました。これからは、機会があるならば限定盤を買おうと心に決めた事件でした。

 ブリリアント・グリーンのボーカル、川瀬智子のソロプロジェクトは驚きのキラキラ・エレクトロ・ポップ作品でした。トラックはマリブ・コンヴァーティブルという謎の人物。その不思議な世界観にどう反応してよいのか分かりませんでした。

 後にマリブ・コンヴァーティブルはブリリアント・グリーンの奥田俊作であることが判明して、そりゃそうだと納得しつつも、あの洋楽的な世界との落差に、これはこれで驚かされたものです。確かにエレポップも洋楽にあるといえばあるのですが。

 デビュー・シングルは「エヴリデイ・アット・ザ・バス・ストップ」。学園三部作の最初ということで、チアリーダーがPVのモチーフになっています。チアの皆さんは健康的なのですが、思い出すのはニルヴァーナの「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」のチアでした。頭飛ぶし。

 続いて「キッス・ワン・モア・タイム」はサッカー部なんだそうです。AIBOが踊るPVでしたが、CDを鳴らすと実際にAIBOが踊るそうです。世の中はどんどんそういう方向に向かっていますから、これは未来の先取りだと言えるでしょう。

 三部作の最後は「ブルーミン」。テニス部です。この踊りだけのバージョンがなかなか見られない。トミー・フェブラリー6のキャラクターは丸いチークのおかめメイクに眼鏡で、脱力度100%のダンスで歌い踊る。これはかわいいのか何なのか。

 とにかくこの世界観はこちらの理解を超えていて、その快感がこの作品の最大の魅力です。若い人には驚かせてもらわないといけません。世代も性別も違うとはいえ、なかなかここまで距離を感じるアーティストはいません。そこがいいです。

 サウンドは徹底的にエレクトロなキャンディー・ポップです。ブリリアント・グリーンとはまるで異なる世界です。ユーロ・ポップ的な部分もありますけれども、根はディスコというよりはロック寄りのサウンドです。やはりヘヴンリーが後ろに隠れています。

 大ヒット・シングル三部作以外の曲もなかなか佳曲が揃っています。ダイハツのCMで使われた「君の瞳に恋してる」のユーロ的なカバー・バージョン、和のテイストが渋い名曲「トミーフェブラッテ、マカロン」などがお勧めです。

 このプロジェクトは、とにかく徹頭徹尾自分たちでコントロールしているところがいいです。変な横やりが入っていない。お酒飲んでるし。自立したアーティスト像は実にロックン・ロールです。チアガール姿でふらふら踊っていますが、ロックです。

 女性の考えるカワイイと、男性が考えるカワイイは随分違うもんだなあとしみじみと思いながら、ベスト・アルバムに添付されていたDVDを見ながら書いています。初回盤を買っておけばよかったと、再び後悔しながら、トミーワールドに浸りたいと思います。

Tommy February 6 / Tommy February 6 (2002 DefSTAR)