「楽器を持たないパンク・バンド」BiSHのメジャー第二弾です。株式会社WACKの主力グループだけあって、今回も常識外れのプロモーションとともに届けられました。AKBグループ、ハロプロ、スターダストなどに対してWACKはねじれの位置を占めています。

 今回のプロモーションは、正式発売1か月前にアートワーク無しのCDを299円の価格にてタワレコで2日間限定販売するというものです。その結果、見事にオリコン・デイリー・チャートで1位を獲得しました。CDへの鎮魂歌のようでもありますね。

 さらには大阪道頓堀で船上ゲリラ・ライブも敢行しています。彼女たちのプロモーションはとりあえずすべてがゲリラ的です。そういう意味では、今作のタイトルはBiSHにぴったりです。「ゲリラ・ビッシュ」。正規軍に対抗するには有効な作戦です。

 今回もWACKらしく、全曲の作曲とプロデュースを松隈ケンタが担当しています。編曲は彼の率いる音楽制作集団スクランブルズ、演奏もほとんど彼らの手になります。ただし、今回はストリングスが大幅に導入されており、そこはゲストの門脇大輔が担当しています。

 収録されている曲は全部で13曲で、そのうち8曲でメンバーが作詞を担当しています。前作よりも少し多い。そして今回はメンバー全員が歌詞を書いているところが特徴です。モモコグミカンパニーだけ3曲、他のメンバーは1曲ずつです。

 この歌詞がなかなか曲者です。大人が書くよりも無理のない分かりやすい言葉で若い女性の心象風景を綴っているので、同世代へのメッセージとして十分に機能していると思います。ただ、世代の差はいかんともしがたく、入り込めないところがむしろいいです。

 サウンド面では前作よりもさらに幅が広がっています。冒頭の曲「マイ・ランドスケイプ」からしていきなりのストリングスに驚かされます。飛行機の墓場のような場所で収録されたMVの雰囲気も含めてかなり洋楽的で、ちょっとオアシスを思わせます。時代を画す名曲でしょう。

 アルバムに先行して発売されたシングル「プロミスザスター」もストリングスを配した名曲で、こちらも洋楽的な雰囲気が濃厚ですけれども、ちゃんと青春歌謡パンクしているところがかっこいいです。サビの部分はしっかりと耳に残りますし。

 そのサビですが、最後の曲「フォー・ヒム」で♪言いたいこと全部 サビに託す予定なんだ そうだからサビの前のメロは地味にして♪とネタばらしがされています。そうだったか、ともやもやが晴れた気分です。

 BiSHらしいデス・メタルを彷彿させるシャウト曲ももちろん入っています。♪しゃらくせえ!♪から始まる「SHARR」、アイナ・ジ・エンドの作詞による「ALLS」がそれです。こういう曲を聴くとほっとします。アイナの歌はいつ聴いても震えますし。

 アイドルというよりも、ライバルはモンゴル800とかラドウィンプスとかそのあたりのバンドではないかと思わせるアルバム作りです。テクノ系のサウンドとは異なるバンド・サウンドがますます耳に心地よい。洋楽ファンにこそ聴いてほしい、かっこいいアルバムです。

The Guerrilla BiSH / BiSH (2017 Avex Trax)