メリー・クリスマス!なのになんかすいません。

 「日々ロック」はヤングジャンプ連載の榎屋克優による漫画です。それを「SRサイタマノラッパー」でヒップホップグループを描いて好評を博した入江悠が映画化しました。これは「友達より大切な人」のいしわたり淳治が音楽をプロデュースしたそのサントラ盤です。

 「史上最強のロックバカ」と「凶暴なアイドル」の物語となっていて、簡単に言えばライブハウスで活動するパンク・ロッカーの青春物語です。こういう物語はいつの時代も有効です。音楽は必然的にパンク。パンクの普遍的な魅力は決してなくなりません。

 たとえロボットの方が足が速かろうと陸上競技が無くならないように、たとえAIの方が楽器がうまくとも、パンク・ロックはなくなりません。なんたってやってる方が気持ちが良いわけですから。音楽的洗練を目指さない肉体派ロックは不滅です。手もなくひねられました。

 主題歌を歌っているのは爆弾ジョニ―、メジャー・デビュー・シングルがTVアニメ「ピンポン」のオープニング・テーマに抜擢されたという北海道のバンドです。彼らは映画のクライマックスで歌われる「いっぱい」も主演の野村周平を加えて演奏しています。

 しかし、音楽の中心を担っているのは黒猫チェルシーです。映画「色即ぜねれいしょん」で主役を好演した渡辺大地がボーカルのバンドですが、この映画ではドラムの岡本啓佑が主役となるザ・ロックンロールブラザーズの一員として迫真の演技を披露しています。

 何とも面白いのはザ・サラヴァーズです。原作にある対バンの犬レイプ役を志願しての登場で、「百姓勃起」なる自作自演曲を披露しています。このバンド、「ひよっこ」で俳優としてブレイクした古館佑太郎のバンドです。まさはる、こんな変な歌を歌っていました。

 蛭子能収もバンド・メンバー役で出ていますから推して知るべし。変なバンドです。さすがにこれだけでは可哀想だということで、サントラには素敵な青春ロック、「喉が嗄れるまで」もきちんと収録してバランスをとっています。

 まったく毛色が違うのはミサルカです。ライバルバンドのビジュアル系、ザ・ランゴリアーズとして「Rasen」を歌っています。とてもゴージャスな「ロミオとジュリエット」をコンセプトとしたバンドで、歌は悶絶のホスト歌謡です。カラオケで歌ってみたいです。

 「凶暴なアイドル」は二階堂ふみです。彼女はアイドルとして2曲歌っています。DECO*27なる元々はボカロ使いのアーティストによる楽曲で、ボカロっぽい電子アイドル・ソングです。ファンとしては、主題歌でのコーラスで聴けるふみさんの声の方が好きなんですが。

 細身のシャイボーイと忘れらんねえよとキューミリ・パラベラム・バレットの滝善充を紹介する余裕がなくなってきました。黒猫チェルシーのサントラ然としたインストもご紹介したいところです。総括すると、とても聴きどころの多いアルバムと言えます。

 いつの時代も定番といえる、バカな若者の一途な青春物語は、パンク・ロックという絶好のモチーフを得て、スタッフとキャストが一丸となって盛り上がっていく、そのあり様が楽しいです。あとは二階堂ふみの「雨上がりの夜空に」が収録されていればよかったんですが。

Hibirock / Various Artists (Soundtrack) (2014 Ki/oon)