行ってきました。11月30日木曜日、上原ひろみとエドマール・カスタネーダの二人によるコットンクラブでのライブ第1部を見てきました。本当にグレイトなパフォーマンスでした。素晴らしかった。本当に素晴らしかった。

 日本の誇るジャズ・ピアニストの上原ひろみとコロンビアのハープ奏者エドマール・カスタネーダの出会いは2016年6月のカナダ、モントリオール・ジャズ・フェスティヴァルです。上原はその出会いを「未知との遭遇、宇宙船が降りてきたみたいな感覚(笑)」と話しています。

 ハープというと優雅なクラシックのイメージですが、コロンビアン・ハープは大衆音楽ホローポなどで伝統的に使われています。実物を見ると、あのドレッシーな女性が弾くハープとはまるで違う、勇壮な楽器です。低音から高音まで自在に出せる大きなギターのようです。

 自在と言いましたが、なんと「ハープという楽器は全音階で半音がない、1オクターブの中に7つしか音がないから弾ける曲が限られる」んだそうです。上原は「だったら私がそういう曲を書けばいいんだ」とあくまで前向きです。

 出会ってわずか1か月で共演したそうですから速い速い。ひろみさんは、ライブでも「これからも二人でいろんな風景を見ていきたい」と語っていましたから、その惚れ込みようがわかるというものです。それほどのベストマッチです。

 ステージではそれぞれのソロ曲も1曲ずつ披露していましたが、いずれも素晴らしいその曲が物足りなく感じてしまうほど、このコンビの一体感は凄かった。ピアノとハープがまさに二つで一つ。お互いソロで立っていける楽器なのに二つで一つとしか考えられない。

 このアルバムは、二人が出会ったモントリオールで出会いの翌年2017年6月30日に行われたライブの模様を収めたものです。これで予習してライブに臨み、終わってから何回も聴いては当日を思い出しています。幸せなひと時でした。

 当日のライブと比べると、前半の4曲は同じ、次にソロが入り、最後はアルバムの大作「エレメンツ」ではなく、チック・コリアの「スペイン」でした。アンコールはアルバムと同じ、グレース・ジョーンズもカバーしたアストラル・ピアソラの「リベルタンゴ」でした。

 「ア・ハープ・イン・ニューヨーク」は名刺代わりの一発。お互いを紹介しながら徐々に盛り上がっていく様は圧巻です。「フォー・ジャコ」ではジャコ・パストリアスに触発されたベースぎんぎんの曲で、ここではひろみさんとエドマールの直接対決が楽しいです。

 「月と太陽」でやるせなさを涙で昇華した後、スター・ウォーズのラグタイム「カンティナ・バンド」で一気に場を盛り上げて、ソロに駆け込む。そして、ここでは4部大作の「エレメンツ」、ステージでは「スペイン」で圧倒して終わる。アンコールには南米を配してしっとり。

 CDでは正体不明の時おり入るノイズは、ステージを見て分かりましたが、ファイティング・ポーズでピアノに向かうひろみさんの唸り声です。ネイマールに似たやんちゃなエドマールとお茶目な迫力の上原のコンビはステージ映えもするし、これ以上ないコンビでした。凄い!

Live in Montreal / Hiromi & Edmar Castaneda (2017 TELARC)