オーストラリアのレーベル、プログレッシブ・ラインからの驚きのコンピレーション第二弾です。第一弾ほどははしゃぎませんでしたけれども、今回もなかなかの顔ぶれが揃っています。当時、第三弾も見かけましたが、そちらはスルーしてしまいました。悪しからず。

 今回は副題がついています。「デビュー前の手作りシングルズ」がそれです。こういうコンピにありがちな話ですけれども、この副題のテーマで貫かれているわけではありません。そこを突っ込んでみることもファンの楽しみの一つです。

 まずは、看板に偽りなし、ゴスの大物となるシスターズ・オブ・マーシーのメジャー・デビュー前の手作りシングル第一弾です。この頃はアンドリュー・エルドリッチとゲイリー・マークスのデュオで、ドラムレスが看板となる前なのでエルドリッチがドラムも叩いています。

 1980年発表のこのシングルはかなり青春をこじらせています。ゴスの片鱗は伺えるものの、肥大した自意識が消化不良のまま不器用に表現されていて、とても微笑ましい。本人たちも気に入っているようですし、大きな愛で受け止めるべき作品です。

 続いては英国の実験音楽派メタボリストですけれども、最初のシングルではなくアルバム発表後の二枚目のシングルです。副題とは齟齬がありますし、そもそもこのコンピレーションには似合わないクールな実験音楽です。私の目当ては彼らですし、期待通りなんですが。

 3番目はレーベルの地元オーストラリアのインダストリアル系アーティストSPKです。1979年発表のシングルは副題通りの作品です。彼らは精神病院の看護人と患者からなるバンドとして当時大いに話題となりました。

 このシングルも手作り感満載です。録音状態からしてDIYそのものですし、曲も若い若い。そこがとても潔くて、後にインダストリアル・ノイズと呼ばれるようになるベクトルがほの見えます。初期衝動がそのままこれも不器用にパックされていてかっこいいです。

 ヴァイス・ヴァーサは英国シェフィールドのビッグ4の一角と呼ばれたエレクトロ・ポップなバンドです。というより、ABCの前身となるバンドと紹介したほうが通りが良いでしょう。副題通りの初々しいシングルを聴くことができます。これがABCになるのかと感慨深いです。

 続くグッド・ミッショナリーズの選曲が良く分からない。彼らはオルタナティブTVの変名バンド的な位置づけでしたが、このシングルはアルバム発表後の1981年にぽいっと出されたシングルです。中心となるマーク・ペリーは1曲ドラムを叩くのみ。面白い出自です。

 最後はシュリークバックの1982年作品、この選曲は気に入りません。というのも確かにメジャー・デビュー前のDIYシングルですが、バンド自体がXTCのバリー・アンドリュースとギャング・オブ・フォーのデイヴ・アレンというポスト・パンク的には大物ですから。格が違う。

 というわけで、ああでもないこうでもないと文句をつけながら聴くのが楽しいです。玉石混淆というよりも磨かれる前のごつごつした音楽が中心ですから、ときどきはっとさせられるのがいいです。たまにはこういう作品を聴いてみるのも一興であるわいと思いました。

Various Artists / The Post Punk Singles Volume 2 (2006 Progressive Line)