「ひよっこ」にはしてやられました。いくら私が「ひよっこ」好きだとは言え、サントラの続きまで買う羽目になろうとは思ってもみませんでした。それは最初のサントラは良かったですよ。それでもそれほど大きくは違わないサントラ2を買うことになるとは。

 お察し頂ける人は頂けるはず、それは一重に「恋のうた」のせいです。「恋のうた」はサントラ中で唯一の歌謡曲風のボーカル曲です。「ひよっこ」は劇中で当時の歌謡曲を何曲か流していましたから、テレビで聴いた時にはこれもそうかと思っていました。

 そしたら何とオリジナル曲だというではありませんか。しかもボーカルはあの太田裕美です。スキャットで始まり、♪すきすきすきすーき、すきすてきすっき♪などと歌われるこの曲は分類するならばモンド歌謡と言ってよいムードたっぷりの変な曲です。

 番組中でも恋のシーンになると何度となく流れて、場面の強度を最強にしていた凄い曲です。しかも昭和40年代そのまんま、当時のテレビのお色気シーンを彷彿とさせます。この曲があるがために、これはもうこのサントラを入手するしかないと観念してしまったわけです。

 この曲が埋もれてしまうのは大変惜しいです。シングル・カットすべきでしたし、カラオケにも入れるべきです。私が歌います。フランソワーズ・アルディの「さよならを教えて」に似ていると言われているようですが私はそうは思いません。

 「恋のうた」だけを取り上げてもいいのですが、やっぱりサントラ2全体もなかなか楽しいです。長丁場の連ドラですから、放映が始まってからも随分長い間、曲が作られ、演奏も収録されていきます。そうなると映像と音楽の間でコミュニケーションが密になっていきます。

 宮川彬良は「スタッフもキャストも最初は皆手探りだが、放送が始まってからの数ヶ月かは、作り手も一観客に。」と書いています。アコーディオンの水野弘文が「毎日録画して、日に3回は観ている」と宮川に語ったエピソードも紹介されています。

 このとても幸せな関係が音楽に、そして演奏に滲み出てきています。これこそが連ドラのサントラの醍醐味です。とすると、大河ドラマと朝ドラはサントラ2の方が良いのかもしれませんが、1は1でまだ見ぬ世界を創りあげる気合に溢れていてそちらも捨てがたい。悩ましい。

 このサントラ2は、ドラマの後半部分ですから、大たいビートルズ来日くらいからの部分です。テケテケテケテケとエレキ・ギターも響くようになりましたし、懐かしい中にもやはりちょっと音楽が新しくなっています。その微妙な表現ぶりがいいです。

 曲の最後に短くドラムでデケデンと締めるエンディングなどはにやっとさせられますし、他方で最後の「ひよっこサンバ」はラテン全開です。突如踊りだしたりする物語の遊び心と音楽の中身がシンクロしていて、何とも幸せな気分を連れてきます。

 ひよっこはなんということのないお話なのに名作でした。そのサウンドトラックも小品ばかりなのに惹きつけられる作品です。しかも「恋のうた」。ことさらに派手な展開をしないのもひよっこ的でいいのですが、これだけはもう少し後押ししてほしいものです。紅白はどうか?

Hiyokko 2 / Akiyoshi Miyagawa (2017 Speedstar)

残念ながら見当たらず。これでご勘弁を。