たんこぶちんの新しいアルバムはボーカルのMADOKAが主演する映画「二度めの夏、二度と会えない君」の劇中歌集です。映画は結局見そびれてしまいましたが、DVD付きのCDを買いました。映画の予告編とメイキングがちょっとだけ見られます。

 ガールズ・バンドでボーカルだけが映画に抜擢されるという、何とも胸がざわざわする展開です。ランナウェイズが解散に立ち至った理由も似たようなものでしたし、どうしても余計な心配をしてしまいます。

 しかし、彼女たちのインタビューを読む限りでは、みんなあっけらかんとしています。さすがは小学校の頃から10年間もバンドをやっている仲間たちです。さらにさかのぼれば保育園から一緒にいるそうですから。ひとまずほっといたしました。

 映画では主人公の村上虹郎とヒロインのMADOKAが結成するプライメンバーというバンドが活躍します。この作品はそのプライメンバーによる楽曲という形をとっています。メンバーは4人、ボーカル、ギター、ベース、ドラムです。

 そのため、この作品では最後の「夏のおわりに」とボートラを除くと、その編成で録音されています。普段のたんこぶちんからギターが一本少なく、キーボードを引いた編成です。そこがいつもと大きく違います。

 キーボードのCHIHARUは今回はアシスタント・ディレクターとして活躍していたそうで、どこまでも前向きです。ただし、「夏のおわりに」が始まってキーボードの音が出てくると、ついつい追ってしまいますから、本作品で一番存在感があるかもしれません。さすが。

 また、今回は映画の劇中歌集ということから、編曲はすべてお馴染みの大久保友裕が手掛けており、かなり統一感のある仕上がりになっています。作曲は鎌田雅人に大久保友裕、久しぶりの伊藤成哉、新顔で渡邊シンジに岩崎隆一と多彩です。

 しかし、残念ながらMADOKAの作曲はありませんし、作詞も「グライダー」を大久保と共作しているのみ。やはり、ここは映画の劇中歌集ということで我慢するしかありません。大きなプロジェクトの一部ですからね。

 サウンドはいつものたんこぶちんよりも少し尖った感じではあります。そこは楽器が少ないからでしょう。最後にキーボードが出てくるとほっとするのはそこに至るまでにその違いを感じてしまうからだと思います。

 「夏のおわりに」はこれまでのたんこぶちん名曲集に素直に連なる曲で、まるでMADOKAが作ったかのようです。演奏力は相変わらず高くて、一昔前のプロモーション・パターンの枠に収まらないのではないかと若干もどかしくも感じます。

 「『今までと同じじゃいけないね』って5人で曲を作り始めて」と本人たちも語っているので、ぜひ次は本格的なロック・アルバムを期待したいものです。結成10周年でさらなる高みを目指してほしいと切に思います。応援しています。

参照://Music たんこぶちんインタビュー2017/8/29

Nidome No Natsu, Nidoto Aenai Kimi / Tancobuchin (2017 YAMAHA)