「リリース当時、弱冠15歳だったマイク・オールドフィールドが19歳の実姉サリー・フィールドと結成したフォーク・デュオ唯一の作品」です。弱冠は20歳のことだと突っ込みたい気持は置いておいて、この作品の紹介の仕方はこれしかありません。

 後に英国ロック界の至宝となるマイク・オールドフィールドのキャリアの最初を飾る作品です。とはいえ、マイクは10歳になる前に公民館で初舞台を踏んでいますから、すでにキャリアとしては5年目になります。何という早熟でしょう。

 サリーとマイクが揃ってフォーク・クラブに出演するようになったのは1966年のことで、翌年にはすでにデモ・レコーディングを経験しています。サリーはマリアンヌ・フェイスフルとお友達だったそうで、マリアンヌの恋人ミック・ジャガーがデモ・レコーディングをセットしました。

 しかもエンジニアはエルトン・ジョンとの活動で知られるガス・ダッジョン、場所はフォークのメッカだったサウンド・テクニクス。目が眩むような話です。この姉弟は出だしからして強運に恵まれています。持ってます。

 さらに今度はペンタングルのジョン・レンボーンの仲介を得て、英国インディペンデント・レーベルの草分けトランスアトランティック・レコードからデビューすることになりました。プロデュースはレーベル・オーナーのネイサン・ジョセフです。

 この作品はサリアンジーと名付けられた姉弟デュオのデビュー作です。まずは姉と弟二人によるギターとボーカルが2日間で録音され、そこにゲスト参加のミュージシャンがオーバーダブを重ねて制作されました。

 ゲストは英国フォーク界の巨人ペンタングルのテリー・コックス、自身のリーダー・アルバムを出したばかりのフルート奏者レイ・ウォーレイ、そしてジェスロ・タルとの活動で知られる編曲担当のデヴィッド・パーマーの三人だけで、オーバーダブも比較的少ないです。

 そのため、基本的にはアコースティック・ギターによる演奏でサリーとマイクが歌うというフォーク・スタイルのアルバムになっています。サリーの声は森を感じさせる美しい声ですから、まさにフォーク向きです。

 後のマイクはさほどボーカルをとりませんが、ここでは姉のボーカルに寄り添うように歌っています。わずか15歳とは思えない達者なギターと老成したボーカルです。森の中で隠遁生活を送っている姉弟という風情です。二人とも十代なのに。

 「チェンジング・カラーズ」から「カメレオン」「ミルク瓶」と続くメドレーに後のマイクを彷彿させるきらめきはあるものの、アルバムのサウンドはサリーに主導権があるようです。姉のステージで伴奏している弟マイクということなのでしょう。

 私にも姉がいるから分かりますが、ただでさえ頭が上がらないのに、こんな形で活動していては一生姉から自立することはできないでしょう。結構な作品ができてしまいましたし。というわけで、次作の制作にかかったところでマイクは自立することにしました。大正解です。

Children of The Sun / The Sallyangie (1968 Transatlantic)