随分と素っ気ないジャケットです。日本でもほぼリアルタイムで発表された本作を初めて見た時の正直な感想です。今に至るも全く同じ感想ですけれども、タイトルの皮肉っぽさとともにこれもまた彼ららしいと言えるでしょう。

 ギャング・オブ・フォー、すなわち四人組のセカンド・アルバムです。前作からほぼ1年半、そのサウンドは本質的には変わらないとは言え、大きく見てくれが変わりました。言ってみれば、パンクからポスト・パンクへと変化しました。

 本作はパンク30周年記念として再発されたCDです。その紹介文を借りれば「よりソリッドになったアンディ・ギルの特徴的なギター・リフを中心に、ファンク・ビートの強化やのちの音響派にも通じるサウンド・メイキングを行い、音楽的にさらなる進化を遂げた内容」です。

 ここで挙げられている3つは確かに彼らのサウンドの特徴です。まずはアンディのギター。リフというのかどうか、もっと自由に弾きまくっています。彼のギターの場合、アンチ・ソロ、すなわちわざと弾かない部分もかっこいいです。

 もともとバンドに音楽的な要素を持ち込んだデイヴ・アレンのベースはますます進化し、ヒューゴのフラットさが少し減じたドラムとのインターアクションが作り出すファンク・ビートはますます強烈になりました。

 ギャング・オブ・フォーは、リズムやメロディーを一旦解体して再構築することで新しいサウンドを作ろうとしています。本作品はその試みがまんまと成功したと言えるでしょう。ファンク・ビートとは言っても米国ブラック・ミュージックのオーガニックとは随分感触が異なります。

 さらにギャング・オブ・フォーの後の世への影響力を高めたのが音響派的なサウンド・メイキングです。曲ごとにアンプのチューニングやサウンドの処理を微妙に変えています。ドラムの位置も変えているそうで、細かな気遣いです。バンド内議論の結果でしょう。

 ジョン・キングのボーカルも前作に比べると格段に落ち着いています。歌詞は相変わらず政治的で、詩的というよりも直截な表現がなされます。しかし、シャウトするでもなく、しごく淡々としたボーカルです。

 前作では勢いに任せて突っ走ったサウンドがパンク的でしたけれども、今回は自らの方法論にさらに自覚的になり、自身を突き放して眺めたような冷静なサウンドで、まさにポスト・パンク的なサウンドになったと言えます。

 その結果、ヒット・チャート的には英国で52位、米国で190位と大ヒットとは言い難いですけれども、彼らは後々まで高い評価を受け続けることになり、その影響を広言するアーティストも多いです。たとえば、レッチリやニルヴァーナ、フランツ・フェルディナンドなどなど。

 レゲエ、ダブ、ジミ・ヘンドリックス、ジェイムズ・ブラウン、キャプテン・ビーフハート、ドクター・フィールグッドにフリー。そんな幅広い音楽がギャング・オブ・フォーに集約されて、そこから新たな方法論とともに拡散していったと考えると、彼らの特異な歴史的な役割が分かります。

Solid Gold / Gang Of Four (1981 EMI)