「『来襲』の衝撃を今なお鮮烈に残したまま、再び直面する新たなる衝撃!」という宣伝文句は当時の気分を程よく表しています。パンク/ニュー・ウェイブ期のアーティストは評判のいいデビュー作に続く2作目でがっかりとなるケースが多いことを頭に置いた文句です。

 B-52’sは変わったバンドでしたから、その2作目への期待は大きいというよりも、大した作品でなくてもいいからがっかりさせないでね、というのが大方の気分でした。しかし、彼女たちはしっかりと仕事してくれました。

 前作発表から半年、1980年4月に再びバハマのコンパス・ポイント・スタジオに入ったメンバーは、ロキシー・ミュージックやブライアン・イーノとの仕事で知られるレット・デイヴィスをプロデューサーに迎えて新作の制作にかかります。

 彼らはデビュー作の前からステージで演奏していた曲をまだストックしていました。往々にして急造のこなれない曲で2作目を埋めて失敗することが多いですから、極めて賢い戦略だったといえます。しっかりしてます。

 ジョン・レノンが活動を再開するきっかけとして、B-52’sの「ロック・ロブスター」を聴いたことを挙げるなど、彼女たちの評判はじわじわと広がりを見せていて、このアルバム発表時にはまだデビュー作がトップ50に入っていました。

 その中での新作発表、堂々全米18位に上がるヒットとなりました。チャート的には前作を上回り、ゴールド・アルバムを獲得する結果となりました。まずは天晴なことです。作品としてのまとまりは前作を上回るとの評判でした。

 アルバム制作時には毎日がパーティー状態だったそうで、日本公演で意気投合したプラスチックスの立花ハジメや中西俊夫、スネークマンショーの桑原茂一なども訪れたということです。パーティー気分を盛り上げて一気に録音してしまう作戦でしょうか。

 その甲斐あって最初から最後までアゲアゲのテンションで通します。女性写真家リン・ゴールドスミスの撮影したジャケット写真に見られるように、ケイト・ピアソンの髪型はますます盛ってきました。過剰な展開です。

 サウンドは前作よりもすっきりとまとまっています。サウンドの要となるリッキー・ウィルソンの4弦ぶきぶきギターはさらに力強さを増し、これぞB-52’sサウンドとして眩しいくらいに輝いています。ある意味でU2におけるエッジのようです。

 彼らはガレージ・バンド的であり、テレビ的であり、レトロでもあり、ビデオ・ゲーム的でもあります。どうしようもなく下らない歌詞も健在で、プードルのキッシュやストロボライトの下でしたいという男やなんやらかんやら。思わずニヤッとしてしまうツボを抑えています。

 もちろんファーストを上回る初心の衝撃はここにはありませんが、「ヴィーナス・西53マイル」など50年代B級映画を彷彿させる曲を落ち着いた調子でテンション高く演奏する彼らには決して一発屋にはない風格が漂っています。

Wild Planet / The B-52's (1980 Island)