パソコンにはマイクロソフト系とマッキントッシュ系の二種類以外にアミーガなる優れモノがありました。後発だったために、しがらみもなく、画像処理と音声処理にそれぞれ独自のチップを配した画期的な製品でした。

 低スペックなのにフロッピー1枚で音声付き動画が映し出されるという驚愕の機械でした。日本でもウゴウゴルーガで使われていましたし、ミュージシャンにも愛好者は多かった。こちらが標準になっていたら世界は5年間は確実に進んでいたでしょう。

 そんなアミーガのマザーボードには「ロック・ロブスター」なる言葉が刻まれていました。B-52’sのデビュー曲の題名です。これを遊び心と言わずして何と言いましょう。アミーガとB-52’sはともにヒップな若者の人気者だったんです。

 私はビーごじゅうにズと読んでいました。世界最高のパーティ・バンドと呼ばれる彼らは1976年にジョージア州で結成されました。そのインディー・デビューとなった楽曲がくだんの「ロック・ロブスター」です。ローカルではありましたが、2万枚のヒットとなったそうです。

 彼らに目をとめたのがアイランド・レコーズのクリス・ブラックウェルで、彼のプロデュースの元でデビュー・アルバムが制作されました。それがこの作品です。いきなりバハマのナッソーにあるスタジオで制作ですから、アイランドも力を入れました。

 大ヒットというわけではありませんでしたけれども、米国のカレッジ・シーンなどではカルト的な人気を博し、日本でもアメリカのパンク/ニュー・ウェイブとして話題となり、早くもアルバム発表の4か月後、1979年11月には来日公演を行っています。

 私は西部劇場でプラスチックスを前座としたコンサートを見に行きました。B-52と呼ばれるビーハイヴ・ヘアの女性二人とちょび髭のフレッド・シュナイダーをフロントに据えたコンサートは見ごたえがありました。思いのほか力強いサウンドに驚いたことを覚えています。

 そのコンサートでもリッキー・ウィルソンのギター・カッティングは光っていました。6弦あるギターの中2本を抜いた4弦ギターの武骨なサウンドがこのバンドの大きな特徴です。歯切れのいいギターはフレッドのかくかくしたボーカルと相性が良い。

 アルバムはスペーシーな音に導かれて「惑星クレア」から始まります。このサウンドとシンディー&ケイトの髪型。歌詞には♪火星♪の文字が。そうです。ティム・バートン監督の「マース・アタック」にこの曲が影響していないはずはないでしょう。

 ケイト・ピアソンとシンディー・ウィルソンにフレッドと3人のボーカリストをそろえ、ヘンリー・マンシーニにペトラ・クラークと、時も越えたポップ感覚で、楽曲を染め上げていきます。チープにしてゴージャス。ジャケットのビジュアルが全てを物語ります。

 さらにおバカな歌詞もいいです。特に「ロック・ロブスター」。子ども番組でも人気が出そうです。フレッドは歌のお兄さんよろしく、♪ダウン、ダウン♪のところではステージに寝っ転がっていましたし。極めて水準の高い最高に楽しいデビュー・アルバムでした。 

The B-52's / The B-52's (1979 Island)