この頃流行った変形ジャケットが懐かしいです。右目の部分が穴あきになっていて、インナー・スリーヴを上下すると、ウィンクしてみせます。アルバム・タイトルをしっかりとヴィジュアルで表現したお遊びは随分お金がかかった模様です。

 スウィートの結成は1968年1月、当初はスウィートショップでしたが、同名バンドが見つかったことから縮めてスウィートになりました。そっちの方が被りそうなのに面白いものです。短縮してすぐにデビュー・シングルを発表しますが不発でした。

 その後、彼らは、ニッキー・チン&マイク・チャップマンのソングライター・チームと組んで、バブルガム・ポップなヒット曲を立て続けに発表し、一躍人気者になりました。しかし、彼らはそれを潔しとせず、やがてチン&チャップマンの元を離れて自立します。

 1976年発表の本作品は、スウィートの4作目、初めてのセルフ・プロデュース作品で、完全自立をアピールした作品です。米国で27位を記録する大ヒットとなりました。ちなみに彼らは英国ではアルバムがあまり売れないバンドでした。

 英国盤と米国盤と日本盤では収録曲と曲順が異なります。米国盤は英国盤に「星あかりの女」を足し、日本盤はそこにさらにヒット曲「フォックス・オン・ザ・ラン」を足しています。両方とも、足された曲はそれぞれ一つ前の作品に収録していた曲です。

 アルバムが大ヒットするというわけではないアーティストには良くあることでしたが、大たい後発の日本盤が一番お得感が高いです。本作品も「フォックス・オン・ザ・ラン」が、同じくヒット曲「アクション」とともにあることで、スウィートの「これ一枚」の資格が十分になりました。

 彼らのサウンドは、当初のバブルガム・ポップ路線から、コーラスを多用したハード・ロック路線へと変貌を遂げたと一般には言われています。グラム後パンク前の英国ポップをハード・ロックで展開したサウンドは私の世代には無条件に嬉しいです。

 コーラス重視のハード・ロックと言えばクイーンです。この時期のスウィートはクイーンと比べられることもありました。しかし、デビュー前から大スター然としていたフレディ・マーキュリーと比べられては堪りません。スウィートはより普通のバンドです。

 その普通っぷりがいいです。いくらハード・ロックに転向したと言っても、その骨身に染みたポップ魂は抜けません。十二分にポップなハード・ロックが展開します。どの曲もキャッチーで、英国でアルバムがヒットしなかったのが不思議なほどです。

 スウィートは、1982年に解散しますが、この時期の黄金のラインナップから、ギターのアンディ・スコットとベースのスティーヴ・プリースト、それにボーカルのブライアン・コノリーがそれぞれ別々にスウィートを立ち上げています。縺れたスウィート愛が面白いです。

 賛否両論あるアルバムですけれども、まだロックが上り調子にあった時代のポップ・ロックはこの時期に青春を過ごした私には眩しい限りです。メロディー、リズム、サウンド、すべてにこの時代感が漂っています。
 
Give Us A Wink! / Sweet (1976 Capitol)