ビリー・フィールドは1980年代初めに活躍したオーストラリアの歌手です。そのアルバムが2004年に日本でCD化されたのは、解説によればDJのクボタタケシ氏がビリーを発掘し、繰り返しクラブで選曲したことによるところが大きいそうです。

 しかし、私は「ロックの要」の影響もあるのではないかと思っています。「ロックの要」は、この頃、BS-iで毎週放送されていた懐かしの洋楽ビデオ作品を紹介する番組で、MCはスターダスト・レビューの根本要さん。

 根本さんがお好きで何度か流されていた曲がビリー・フィールドの「恋とタバコとスウィングと」でした。それまで全く知らなかったこともあり、とても新鮮に感じられたので、私はCD発売と同時に購入したのでした。他の曲も期待以上に素敵でした。要さんに感謝です。

 ちなみにアシスタントは坪井志津香さんで、今ではアンジャッシュ児嶋の奥さんをされています。要さんが世代違いの坪井さんにうんちくを傾けるわけで、わが身を振り返りながら見ておりました。坪井さんの反応の仕方がとても羨ましかったです。

 ビリー・フィールドは1970年代前半にロック・バンドで活動した後、田舎に戻ってどうやら牧場主をやっていたようで、そこで得た資金で1979年にスタジオを設立します。そして、1981年、28歳の時に音楽活動を再開し、「恋とタバコとスウィングと」で大ヒットをとばします。

 この曲を含むデビュー・アルバムはオーストラリアでチャートを制し、年間チャートでもトップ5に入る大ヒットを記録しています。アルバムからの2枚目のシングル「ユー・ワーント・イン・ラヴ」もシングル・チャートを制しています。

 日本には1983年東京音楽祭にオーストラリア代表として参加して金賞を獲得しました。その時の歌は「恋とタバコとスウィングと」です。日本盤は前年に発売されており、さらにキリンのウイスキーCMに「ユール・コール・イット・ラヴ」が使われて知名度を上げました。

 「ロックの要」の映像はこの東京音楽祭のもので、ジャケット写真そのままのビリーが酔いどれっぽい仕草で、ハスキー・ボイスを聴かせる、それはそれは素敵なものでした。リアルタイムで知らなかったことを悔やんだものでした。

 ビリーのスタイルは1940年代のスウィング・ジャズです。1980年代初めと言えば、まだまだロック全盛の時代です。その時に、4ビートを中心とする、ストリングスやホーンを配した本格的なジャズを基調とした自作のポップスを軽妙な調子で歌うとはかなりユニークです。

 ビリーは曲作りにも定評があり、カバーされることも多い。本作品では全曲が自作、ジャズ界のシンガー・ソングライターの面目躍如です。ちなみにスタジオ経営手腕もあり、彼のスタジオでインエクセスやエア・サプライなどの有名どころがアルバムを制作しています。

 本作品はデビュー作に1984年発表の2作目をカップリングした編集盤です。ビリーの活動はその後もしばらく続きますが、ヒットには恵まれません。しかし、ビリーはユニークなスタイルで多くの人の記憶に残っています。後世に残したい作品です。

Bad Habbits + Try Biology / Billy Field (2004 Air Mail)