破裂音三連発がやんちゃな元気溌剌を連れてくるビー・バップはこのバンドには似合いません。特にビーバップ・ハイスクールの日本ではその対極にあるバンドです。もちろん語源となるジャズのビー・バップからも遠い。不思議なバンドです。

 ビー・バップ・デラックスはギターとボーカルのビル・ネルソンのバンドです。学生時代からバンド活動をしていたネルソンは、1971年に地元のレコード店主のレーベルからアルバム・デビューを飾っています。これをジョン・ピールが気に入ってキャリアが始まります。

 そこからは恵まれながらもメンバー交代を繰り返す安定しない活動を続け、1976年のこの4作目に至ります。本作は「ブリティッシュ・ポップ・アルバムの名盤と称される彼らの最高傑作アルバム!」と言われます。確かにキャリアの一つの頂点となるアルバムです。

 この作品は「グラム・ロックと来るべきニュー・ウェイヴの架け橋となったアルバムで近未来POPの先駆けとなった」アルバムです。ちょうど分かりやすい二つのブームの端境期に当たるため、やや全体に影が薄いシーンに当たってしまいました。

 しかし、この時期は、スレイド、ジョーディー、スウィート、マッド、さらにはベイ・シティ・ローラーズなどのバンドが花開き、英国のポップ・シーンはまばゆいばかりの光を放っていました。当時学生時代を過ごした人以外には共感頂けないと思いますが。

 その中にあって、ビー・バップ・デラックスはビル・ネルソンのプチ・カリスマ的な魅力で際立っていました。彼らを評して、「デヴィッド・ボウイのグラム・センスとクイーンのギター・ロックの間を埋める存在」と評価する人がいたほどです。

 本作品はビー・バップ・デラックスとしてアメリカ・ツアーに出た際のカルチャー・ショックをテーマにしたコンセプト・アルバム的なつくりになっています。英国人は同族と信じているだけに実際のアメリカに触れるとその違いにショックを受けるのが定番です。

 ビル・ネルソンは定評のある文学的な詩でそこらあたりを描いていきます。これまでの作品に比べればギターを抑えめにした、トータル・アルバムを意識したサウンドと相まって、落ち着いたアルバムを作ることに成功しました。

 エレクトリックなサウンドもアコースティック的に響くファンタジーなサウンドが創造されていて、とてもポップなのですけれども、全体に感じる雰囲気はプログレッシブ・ロックのそれです。プログレ・バンドがポップなロックに挑戦した感じ。

 ビル・ネルソンはやはり根はプログレ野郎なのではないかと思います。ジャケットに写るネルソンの目玉の大きな典型的な英国人顔がそれを物語っています。すっきりとした極めて上質なプログレ・ポップ・アルバムを輩出しそうな顔をしています。

 とても素敵な作品なのですけれども、ギネス音楽百科による「自分たちのスタイルに合う音楽的な隙間を見つけられなかったエキサイティングなバンド」との評が妙に納得できます。何かが足りない、あるいは何かが過剰なのでしょう。本当に素敵な作品なのですが。

Modern Music / Be Bop Deluxe (1976 Harvest)