今回のジャケットもモノクロですけれども、くっきりした形が現れてきました。ドームも3作目、途中で4ADのプロジェクトを挟んでいます。わずか2年でこのペースですから、ブルース・ギルバートとグラハム・ルイスのデュオの充実ぶりが分かります。

 本作はドーム・レーベルから発表された「ドーム3」です。1980年11月から1981年6月の約半年間に行われた6回のセッションからの録音から制作されています。今回はゲスト・ミュージシャンも比較的多彩です。

 新顔はミュート・レコードのオーナーとして知られるダニエル・ミラーで、3曲にサックスで参加しています。さらに4ADプロジェクトからの続きでラッセル・ミルズ、エンジニアのエリック・ラドクリフ、ドーム・レーベルのAMCなどの顔が見られます。

 本作について、ルイスは「私達は今、以前以上に困難な方法でスタジオの素材だけ使い音楽を制作している。太陽やその中の核のエネルギーを音楽化しようとしている」と語っています。尋常じゃない音が含まれているのはそういうことだったんです。

 さらに「私たちは音の子宮を探ろうと、様々な音を反復させ実験を行っている最中だ」とも語っており、「この実験の一部は、野外の環境スタジオという名をつけた場でとりおこなわれ」ているそうです。サウンドの性格を表しているコメントです。

 「音の子宮」とは素敵な表現です。彼らの粘液にまみれたオーガニックなインダストリアル・サウンドを表わすのにこれ以上の表現はありません。さすがは自分たちの制作しているサウンドに極端なまでに自覚的なデュオだけのことはあります。

 本作には10曲が収録されています。そのいずれもタイトルに普通の言葉は使われていません。一部はアナグラムになっていたりするようですが、基本的には意味がないタイトルになっています。

 8曲目の「ダンス」もcではなくs。これはロック・マガジン03号のタイトルです。というのもこの曲はロック・マガジンの附録ソノシートのために二人が送ってきたものでした。その時のタイトルは「クロス・グロウ・プレイヤー」、それを改めて「ダンス」です。

 ところで、本作ではボーカルが結構活躍しています。しかし、曲名同様、意味をそぎ落としており、声としての参加です。ドームは声とパーカッションの反復するパターンによる豊潤なリズムを再発見したのだとライナーノーツは表現しています。

 これまでの二人の作品に比べると、それぞれの楽曲がタイトにまとまっています。それぞれに発見された固有なリズムを中心に構成され、強度が増しています。超然とした佇まいはそのままに、美しさすら感じるテクスチャーが提示されていきます。

 これまでのドームの作品の中では最高傑作と呼ばれることも多く、ひとつの到達点であることは間違いありません。灰色の機械の風景の中に、幽霊を見たような、原初の光景を見たようなそんな呪術的な世界がここに極まっています。

参照:ロック・マガジン41号(1982年)

Dome 3 / Dome (1981 Dome)

ドームは著作権管理が厳しいようです。本作品とは直接関係ありませんが、ご参考まで。