ギルバートとルイスの二人はドームのプロジェクトを行うにあたって、自分たちのレーベル、ドームを設立しました。ドームのディストリビューションをラフ・トレードが行ったことから、この作品「ドーム2」は日本盤も発売されました。

 二人によれば前作が8000枚、今作は1万枚ほど売れたそうです。インディーズとしては結構なヒットと言うべきなんでしょう。日本盤の発売は徳間ジャパンによるラフ・トレード・シリーズの一つでした。さすがはラフ・トレード、大胆な展開でした。

 このアルバムは、前作からさほど時を置かず、わずか4か月後にスタジオ入りして一気に仕上げられました。前作に比べると格段にアルバムとしてのまとまりが見られます。手探り状態から脱して、二人は自信に満ちた姿で立ち現われました。

 冒頭の「レッド・テント」は二部構成で、特に後半の「レッド・テント2」では、♪ドーーム♪と叫んだ後にインダストリアルなサウンドがどんと被さるところなど鳥肌ものです。シングル・ヒットすら狙えそうな力作です。

 二人は新たなレコーディング・プロセスを模索し、通常の楽曲の形式を全て捨て去ると同時に、各楽器の音にもさまざまな実験を加えています。出来上がったサウンドは電気的なものではありますが、むしろオーガニックを連れてきます。

 彼らは、「表現しようとする思考を繰り返し繰り返し反復することによって音楽をよりオーガニックにしないと音楽の中に含まれる私たちの思考は伝達されない」と語っています。「反復、持続、そして変化のこの過程が私たちの音楽の中心テーマ」なのです。

 「私たちの思考」は恐らくは言葉にはできないのでしょう。反復されるパターンに身を委ねることで、肉体や精神が影響を受ける中で、直接思考が伝達されてくるのです。言葉を媒介としない体験。ある種の儀式であると言えます。

 一方で、ドームの存在意義は「自然であり続けること」です。思考を音に写し取っていくにしても、作為を極力排することに意が用いられているのでしょう。それがこの時期の二人の多産に表れています。即興ではありませんが、作り込んでもいない。

 ギルバートは「音楽、または音というものは常に存在するものであり、私たち人間が生み出したものではない。現代において音楽が一種の袋小路に追い込まれている状況を打開するのは、音楽を制作するという行為ではなく、音楽をより自然にすることだろう」と語ります。

 なかなかこうした姿勢を貫くのは難しいことです。インダストリアルであると同時にオーガニックでもあるという、ソフト・マシーンとでも言えるサウンドを展開するこのアルバムはその難しい姿勢を堅持している稀有なアルバムだと思います。

 二人はまるでシャーマンのような役割を担っています。普通に存在する音はむしろノイズの方が多い。そうした音が二人を通すことでごく自然に居場所を見つけていく。そんな音の所作を感じられるアルバムです。

参照:ロック・マガジン41号(1982年)

Dome 2 / Dome (1980 Dome)

見当たらないので、同時期の作品から。