邦題は「灼熱の狂宴」と何やらおどろおどろしいですけれども、原題を直訳するとシンプルに「感謝」です。もちろん、ライブを共有したお客さんであり、アース・ウィンド・アンド・ファイアーの音楽を好むすべてのファンへの感謝を込めた作品です。

 前作が全米1位に輝いたアースに対して、レコード会社は早急に次を発表するように要請します。当然と言えば当然です。しかし、ツアーで忙しいバンドにはじっくりと次作に取り組む余裕がなく、それではとライブ・アルバムが企画されました。

 それだけでは申し訳ないと考えたのかどうか、LP2枚組のうち1面だけは新曲のスタジオ録音が収録されています。この面も充実しているのですけれども、私としてはライブをもっと聴きたかった。なんてったって素晴らしい演奏です。

 アースのショウは派手な演出も絡めて大変人気の高いものだったようです。そしてメンバーそれぞれの力量も高く、ライブ演奏は本当に素晴らしいものです。全盛期にリアルタイムで発表されたライブ・アルバムがこれだけというのは何とも残念なことです。

 アルバムはMCのイントロに導かれて、「アフリカーノ」と「パワー」のメドレーで始まります。いきなりエンジン全開です。アースは重いファンクも出来るという当たり前の事実が重く迫ってきます。「ヤーニン・ラーニン」へと続く流れでもう成功が約束されたようなものです。

 今回は初めてホーン・セクションの3人がクレジットされました。彼らにアンドリュー・ウールフォークを加えたホーンは普通のファンクよりもジャズ的にメロディーをリードしていくホーンで、アースの音楽の一つの特徴でもあります。

 そして、ひときわ高い拍手に迎えられるのが「デヴォーション」と「リーズンズ」です。フィリップ・ベイリーのファルセットがいかにファンに愛されていたのかが分かります。こちらもスタジオ盤よりも迫力を増していて素晴らしいです。

 このライブにはモーリス・ホワイトがアース結成前に参加していた、ジャズ界のファンキー男ラムゼイ・ルイスが一曲ゲストで参加しています。「太陽の女神」がその曲で、これはラムゼイのアルバムにアースの面々が参加して大ヒットしたアルバムのタイトル曲です。

 とにかくこのライブ演奏は凄味すら感じます。「灼熱の狂宴」と題したくなる気持も分かります。ファンクのライブにしてはロック的なすっきりした録音なのですが、それがアースには良く似合っています。

 スタジオ面は彼らのソングライターの一人スキップ・スカボローの「キャント・ハイド・ラヴ」や、「シング・ア・ソング」というヒットを生みました。ライブの熱気の後なので、どうしてもおとなしい感じがしてしまいますが、前作の延長にある気合のこもった楽曲群です。

 本作品は当然のように全米1位となり、ほぼ1年間にわたりチャート・インするロング・セラーになりました。トリプル・プラチナ・アルバムを獲得し、アースの一つの頂点を示す作品として、ファンの間で高い人気を誇っています。気合が違います。

Gratitude / Earth, Wind and Fire (1975 Columbia)