モーリス・ホワイトの弁によれば、アース・ウィンド・アンド・ファイアーのキャリアは「シャイニング・スター」前と後の二つに分けられます。普通ならばワーナー期とコロンビア期に分けるところですが、それほど「シャイニング・スター」が際立っていたということでしょう。
 
 アースのメンバーは一人増えて9人になりました。これだけの大所帯をまとめ上げるには大ヒット曲が必要だと感じていたモーリスにとって、ギターのアル・マッケイが「シャイニング・スター」のギター・リフを生み出した時には、それこそ鳥肌がたった模様です。
 
 その割には作曲のクレジットにマッケイの名前はありません。しかし、誰もが疑うことなくマッケイの功績を第一にあげる楽曲です。「シャイニング・スター」はシングル・カットされて見事にメイン・チャートを制しました。彼らにとってもちろん初の快挙です。
 
 その勢いをかって、アルバムも全米1位に輝きました。シングルとアルバムが同時に全米1位となったのは、黒人ミュージシャンとしては初めてのことだったそうです。時は1975年。まだまだ人種差別が色濃い時期でした。
 
 ところでこの作品はサウンドトラックとして制作されています。同名映画はハーヴェイ・カイテルが主演しており、アースの面々も登場して演奏シーンを披露しているそうです。映画は大きくこけたらしく、サントラだけが残りました。
 
 どうやらモーリスはそのことを予感していたらしく、サントラを映画の公開よりも先に発表しました。なるべく映画と関係がないように立ち回るという見事な才覚です。それも功を奏して、全米1位に送り込んだんですから、これは大成功でした。
 
 ジャケットもまるで映画とは無関係ですが、一応、裏ジャケットに申し訳程度の小さい字でサントラであることが書かれています。ここも、これまでの作品と違って、モノクロを基調としたお洒落なジャケットになっており、単体で生きていく覚悟を示しています。
 
 サウンド面では前作から係わっているチャールズ・ステップニーが共同プロデューサーとしてクレジットされるに至りました。アースの雑食型の魅力を整理した腕前はさらに冴えわたり、アルバム全体の完成度はさらに高まりました。
 
 アースの代表曲となるファンク・チューン「シャイニング・スター」の大ヒットもさることながら、アースのもう一つの大きな魅力となるバラードの代表曲「リーズンズ」が光ります。フィリップ・ベイリーの甘いボーカルを最大限に輝かせた名曲です。アルバムの代表曲でしょう。
 
 アルバム最後にはアフリカンな民族音楽風味を加えてもいますし、全方位に向かうスパイクがさらに尖って来ています。一方で、こてこてのソウル・ミュージックとは明らかに一線を画しており、なるほどポップ・チャートでも受けいれられるだろうと思わせる内容です。
 
 ♪子どもたちのゴールドな心が、世界のあり様によってコールドになってしまう♪というメッセージを歌いながら、誤りであってほしいと願う心でタイトル曲はできています。これまた映画と関係なさそうで、モーリスの自信は全開となりました。それもうなづける快作です。
 
That's The Way Of The World / Earth, Wind & Fire (1975 Columbia)