アース・ウィンド・アンド・ファイアーのアルバムの中では最も彼ららしくないジャケットです。カリブーといえばカリブを連想してしまいますが、本アルバムが制作されたカリブー・スタジオはロッキー山脈のふもとにあります。どうやらそこの写真のようです。

 かろうじてスピリチュアルなサインが表れていますけれども、背景写真はカントリー歌手にこそ相応しく、アース・ウィンド・アンド・ファイアーの雰囲気からは遠い。しかし、ジャケットとは裏腹に本作品はいよいよアース節が全開となった記念すべきアルバムです。

 本作品はとうとうトップ20に入るヒットを記録し、ストレートにプラチナ・アルバムとなりました。シングル・カットされた「宇宙よりの使者」もR&Bチャートではトップ10に入るヒットとなっています。いよいよ時は来ました。

 前作では限られた活躍しかできなかった紅一点ボーカルのジェシカ・クリーヴスは脱退しましたが、その他のメンバーは前作と同じです。ここに、モーリス・ホワイトがラムゼイ・ルイス・トリオ時代に同じチェス・レコードで知り合ったチャールズ・ステップニーが初めて登場します。

 ステップニーは当時、ミニー・リパートンをフィーチャーしたロータリー・コネクションというバンドを作って、チェスの実験的なサウンドを扱うレーベルの元で活動していました。モーリスとステップニーはその時にお互いを認めあったということなのでしょう。

 モーリスは、バンド・メンバー以外でアースに影響を与えたという点ではステップニーの右に出るものはいないと認めています。「彼は我々をより良くしてくれたんだ」と語っているんです。ステップニーはアソシエイト・プロデューサーとして名を連ね、一部曲作りにも参加しています。

 ステップニーはバンドのさまざまな特質をしっかりと見極め、それぞれを活かしきる音作りをもたらしました。例えば、ボーカルにおいては、フィリップ・ベイリーのファルセットとモーリスのテナーの対比を際立たせるようになりました。

 アースのサウンドそのものともいえるアル・マッケイのギターのカッティングが活躍しだします。モーリスの出自であるジャズは「スパスモディック・ムーヴメンツ」に噴出しますし、ワールド・ミュージック指向は「カリブー」にとどめを刺します。

 中毒性の高い「カリンバの歓喜誘惑」からレコードをひっくり返して続く「ドラム・ソング」ではアースの特徴の一つ、モーリスのカリンバ、親指ピアノが轟き、バラードの才は裏名曲とされる「デボーション」に遺憾なく発揮されています。

 「私たちはよりタイトに演奏するようになったんだ」とモーリスが認めています。アースの指向するあらゆる方向性を開花させたステップニーの功績は偉大です。彼は当然スピリチュアルにも目を配っていますが、そちらは日本のレコード会社の方がより進んでいます。

 邦題は「太陽の化身」、多くの楽曲にも宇宙や愛を語る邦題が付けられています。精神世界を経巡る愛の伝道師としてのアース・ウィンド・アンド・ファイアー。サウンドも一皮むけ、メッセージにも磨きがかかってきました。

Open Our Eyes / Earth, Wind & Fire (1974 Columbia)