このアルバムにも本邦発売時には「ブラック・ロック革命」と副題が付けられていました。ロックというのも意外と言えば意外な命名ですけれども、アース・ウィンド・アンド・ファイアーのソウルにしてはライトな感覚を言い表したタイトルだとも言えます。

 前作以降、ギターのロナルド・バウティスタとサックスのロナルド・ローズが脱退し、新たにギターにアル・マッケイとジョニー・グラハム、サックスにはアンドリュー・ウールフォークが加入して、総勢9名の大所帯となりました。

 一般にここに黄金期のアースが揃ったと言われます。核となるモーリス・ホワイトとヴァーディン・ホワイトの兄弟、ボーカルにフィリップ・ベイリーとジェシカ・クリーヴス、キーボードのラリー・ダン、ドラムのラルフ・ジョンソン。覚えておきましょう。

 前作に比べると、ボーカルの比重が増しています。フィリップ・ベイリーの高い声が看板ですけれども、本作からは低めの声のモーリス・ホワイトも本格的にボーカルをとり始めます。逆にジェシカの活躍の場はどんどん減ってしまっています。

 さらにキーボードやギターの活躍も目立ち、全般にポップな装いが高まってきました。そして、当時の倣いなのか、ラテン色が強まっています。特に13分を超える大作「ザンジバル」はラテン音楽では有名なエデュ・ロボの曲のカバーで、ラテン風味全開です。

 本作品からは、後々までステージでの定番となる「イーヴィル」と、ほぼタイトル曲「キープ・ユア・ヘッド・トゥ・ザ・スカイ」の2曲がシングル・カットされ、どちらもそこそこのヒットになりました。次第次第にアース節が完成されていきます。

 アルバム自体も27位まで上がるヒットとなり、結果的にはプラチナ・アルバムを獲得しました。71週間にわたってチャート・インしていますから、後の成功を受けてのことだろうとは思いますが、それでも作品の力の証明にはなっています。

 最初にも書いた通り、アースの繰り出すサウンドは、もちろんR&Bであり、ソウルに分類されるのですけれども、こてこてのディープなサウンドではなくて、ジャズやラテンの色も濃い洗練されたファンク・サウンドです。そこにポップな風味もまぶしてある。

 そういうことなので、数多のブラック・ミュージックのバンドに比べると、圧倒的に聴きやすい。その傾向は前作から格段に深まっています。このまま行き過ぎると崖から落ちてしまいそうですが、この頃の彼らはしっかり踏みとどまって礎を築いていきました。

 一方で、ジャケットはピラミッド型に並んだメンバーのフラワーなポートレートとなっており、モーリスの平和指向を遺憾なく表しています。「グループの目的は人間性を高めることだと常に肝に銘じている」と主張するモーリスです。

 ベトナム戦争やウォーター・ゲイト事件など、アメリカの社会には不穏な空気が流れていた頃です。アースの分かりやすさはとても貴重なものだったことでしょう。スーパースターの予感がひしひしと募ってまいりました。

Head To The Sky / Earth, Wind & Fire (1973 Columbia)