アルバムの邦題は「地球最後の日」となっていますし、各楽曲にも大仰な邦題が付けられています。日本ではアース・ウィンド・アンド・ファイアーはスピリチュアルが色濃いバンドとして知られています。

 リーダーのモーリス・ホワイトは1960年代からシカゴでセッション・ミュージシャンとして活動していました。チェス・レコードのジャズ・マン、ラムゼイ・ルイスのトリオでも活躍したモーリスでしたが、やがてルイスの元を去り、アース・ウィンド・アンド・ファイアーを結成します。

 バンドはワーナー・ブラザーズからデビューしました。そこそこ成功したものの、モーリスは限界を感じて、2作を発表したところで、バンドを一旦解散させます。そして、メンバーをほぼ一新してアース・ウィンド・アンド・ファイアー・マーク2をスタートさせました。

 継続しているのは弟のヴァーディン・ホワイトのみで、まるで別のバンドなのですが、バンド名は同じ。ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズのもじりだという説もあるにも係わらず、モーリスはよほどこの名前を気に入っていたんでしょう。

 バンドはコロンビア・レコードの社長クライブ・デイヴィスのオーディションを受け、ロンドンで行われた会社の年次総会で演奏し、見事にみんなのハートをつかむことに成功しました。今度のバンドにはモーリスも大そう満足したことでしょう。

 おどろおどろしいジャケットには8人のバンド・メンバーが描かれています。モーリスの頭からはアース・ウィンド・アンド・ファイアーが生えていて、そこに他のメンバーが交信しています。紅一点のジェシカ・クリーヴスが裸なのが何だか変ですが。

 モーリスは「自分がアース・ウィンド・アンド・ファイアーがどうなってほしいかということをバンドに分からせようと一生懸命だったことしか覚えていない」と語っています。それはソウルとジャズとR&Bとファンクを融合したスピリチュアルな音楽なんでしょう。

 本作品でのアースは8人組で、ギター、ベース、キーボード、サックスが一人ずつ、残りの4人はボーカルとパーカッションです。まだまだ弱いものの、アースらしいキレキレのリズムがすでに表れていますし、モーリスのカリンバも控えめながら顔をだしています。

 ジャズ寄りのR&Bとして十分に完成された作品で、フィリップ・ベイリーの魅惑のファルセットも全開です。ここでは、アメリカン・フォークの父ピート・シーガーの「花はどこへ行った」のカバーを聴かせてくれます。こんなカバーを持ってくるところも彼ららしいです。

 この曲に続く壮麗なバラード「永遠なる愛」はジェシカのボーカルが冴えるこてこての曲ですし、最後の「母胎回帰」、原題では「マム」もモータウンっぽいソウル・バラードです。ややこしいジャケットとは裏腹にゴージャスなサウンドはとても分かりやすいです。

 本作は後の基準からするとまだまだですが、最高位87位、25週間にわたってチャート入りする小ヒットになりました。これでもモーリスには嬉しかったことでしょう。後のスーパースターの片鱗で構成された何だか嬉しいアルバムです。

Last Days And Time / Earth, Wind and Fire (1972 Columbia)