「ウルトラQ」が放映を開始したのは昭和41年、1966年のことでした。「ウルトラマン」が続き、その後継の「ウルトラセブン」が終わったのは1968年の暮れのことです。その後、2年半の時を隔てて「帰ってきたウルトラマン」の時代になります。

 自分史に重ね合わせると6歳から8歳、帰ってきた時は10歳です。この頃の1歳さは50代の10歳に相当します。というわけで、私は「ウルトラセブン」まではあんなにのめり込んでいたのに、帰ってきてからは軽いお付き合いに留まってしまいました。

 そんな個人差はあるものの、ウルトラマンは当時の男の子にとってはなくてはならないヒーローでした。勢い、その主題歌を始めとする音楽は同時代の歌謡曲に比べても、圧倒的に知名度が高いと言えます。要するにスタンダードです。

 ジャズで演奏されることを想定していない楽曲であっても、ジャズ・アレンジを施してスタンダード化するというのはいかにもジャズらしい。シンディー・ローパーの「タイム・アフター・タイム」などもいつの間にかスタンダード化していますし。

 本作品はジャズ・ギタリストの布川俊樹が前世紀の終わりから取り組んでいる「ウルトラマン・ジャズ」シリーズの第四作が発表されたことを契機に、過去の作品から代表曲を選んで編まれたベスト・アルバムです。

 名前からして企画ものっぽいですが、そんなことはありません。誰もが知っている楽曲をジャズ・スタンダードとして披露する。ジャズの王道です。誰もが知っている曲であるがゆえにごまかしがきかない。真っ向勝負です。

 選曲は私に合わせてくれたのか、「ウルトラマンの歌」が3バージョン、「ウルトラセブンの歌」が2パターン、初代「特捜隊の歌」、「『ウルトラQ』のテーマ」とセブンまでの楽曲がほとんどです。例外は帰ってきた「MAT」と「ウルトラマンレオ」のみ。

 収録アルバムで言えば、1998年の第一作「ウルトラマンジャズ」から4曲、続く「帰ってきたウルトラマンジャズ」から3曲、「ウルトラマンジャズ・ライヴ」から2曲です。どれもこれも極めて真っ向からスタンダードなジャズしています。

 「ウルトラマンの歌」はオリジナル、ライブ、打ち込みを使ったフューチャー・ジャズ・バージョンの3パターンです。フューチャー・ジャズも安心して聴ける仕様ですし、どのパターンも冒険するというよりも安定した演奏を聴かせることが目指されています。気持ちがいいです。

 「『ウルトラQ』のテーマ」だけはもともとがジャズ仕様でした。それだけにジャズ・プロジェクトにはストレートに合致しています。何の違和感もない。そして「MAT」はそれまでのクリア・トーンの布川ギターが、ここだけ情感漂うロックな音色になっていてずるいです。

 布川俊樹はギターを教えているだけあって、ウルトラマンを使ったジャズの教科書のような演奏になっています。4人ないし6人のコンボのバランスも見事ですし、スタンダードなジャズが好きな人なら家に備えておいて間違いないでしょう。

The Best Of Ultraman Jazz / Toshiki Nunokawa (2017 Japan)