今回のジャケットも秀逸です。太陽の光を背にした四人の佇まいはロックのすべてを物語っていますし、直訳邦題の「太陽を待ちながら」も魅力的です。ついでにタイトルのフォントもとてもサイケデリックです。ベルボトムというフォントに近いように思います。

 前作からわずかに9か月で発表された第三作です。本作からは「ハロー・アイ・ラヴ・ユー」の全米ナンバー・ワン・ヒットが生まれましたし、アルバム自身もビルボード誌で初の全米1位に輝いてます。それに英国でも大ヒットになりました。

 今回は「ジ・エンド」や「音楽が終わったら」のような大作はなくて、短い曲が11曲、全部で30分強のコンパクトなアルバムになりました。リアルタイムでは分かりませんが、振り返り評価では、前2作に比べて明らかにクオリティーが落ちたことになっています。

 水を差していることの一つに「ハロー・アイ・ラヴ・ユー」がキンクスの「オール・オブ・ザ・ナイト」に酷似しているとして、キンクスのレイ・デイヴィスに訴えられたという事件がありました。全米1位にならなければさほど問題にならなかったでしょうに。

 また、そのアクションはドアーズの大いに賞賛されたヨーロッパでの公演の時期に合致しています。キンクスにも脅威を与えるほどの素晴らしさだったのでしょう。ジム・モリソンのカリスマはヨーロッパのオーディエンスも魅了したのでした。

 パワーが落ちた三作目と言われますが、なかなかどうして粒ぞろいの楽曲から成る素晴らしいアルバムです。たとえば、「スパニッシュ・キャラバン」では、ロビー・クリーガーのフラメンコ・ギターが炸裂します。

 この人のギターは普通のロックのイディオムから外れたところにありますが、こうしたバックグラウンドを持っていることが分かると納得できます。サイケデリック時代のギターなのに、時代にピン止めされていないのはさすがです。

 有名な「名もなき兵士」はベトナム戦争真っ只中の米国において、激しいプロテスト・ソングとなっています。まだミュージック・ビデオが一般的でなかった時代に、衝撃的なビデオを制作していて、ドアーズの妥協のない姿勢を遺憾なく示しています。

 大半の曲が3分弱であり、4分を超える曲が2曲しかありません。いずれもポップな魅力を放っています。レイ・マンザレクのフラフラしたキーボードもクリーガーのギター同様、あまりロック界に見られなかったスタイルで、時にとてつもなく可愛らしく響いたりします。

 ジム・モリソンは、ポップなアイドルとしてのパブリック・イメージとシリアスなアーティストとしての自覚との間で苦しんだと言います。ポップと言ってもバブルガム・ポップなわけでもないですし、結構やりたい放題のサウンドなのに、どこかこの悩みはピンときません。

 ドアーズは自由度の高いサウンドを展開していて、それがポピュラリティーも獲得するわけですから、ある意味理想的な形です。本作などはポップでいて、なおかつ重い楽曲が並んでいて、大力作だと思います。日本のGS的でありながら、自由の度合いが一つ深い。

Waiting For The Sun / The Doors (1968 Elektra)