サウンドトラック・アルバムにもいろいろな種類があるものです。通常は、劇中で使用されるいわゆる映画音楽を中心にするものですし、ヒット曲満載の映画であれば、主題歌や劇中で使用されるヒット曲が中心になります。

 この「セーラー服と機関銃」は映画の台詞付きのシーンをそのまま収録したり、主演の薬師丸ひろ子が映画制作を振り返って感想を語るナレーションが入ったりしており、よくあるオリジナル・サウンドトラックとは随分趣きを異にしています。

 むしろ、これは薬師丸ひろ子が歌う「セーラー服と機関銃」に「あたりまえの虹」をカップリングしたシングル盤に目いっぱい特典をつけた作品と言えます。そんなわけですから、アーティストは音楽監督の星勝ではなく、薬師丸ひろ子とするのが適当です。

 薬師丸ひろ子の映画デビューは「野性の証明」でした。「セーラー服と機関銃」は彼女の5作目の主演作品であり、相米慎二監督作品としては「翔んだカップル」に次ぐ2作目です。それに何よりも、これは彼女の歌手デビューとなった作品です。

 1981年と言えば、松田聖子がデビューして大人気となり、再びアイドル戦国時代に突入しようとする頃です。飛ぶ鳥を落とす勢いの松田聖子にとって、最大のライバルになるのは畑違いの薬師丸ひろ子ではなかろうかと多くの人が思ったものです。

 それほど薬師丸ひろ子の歌唱は鮮烈な印象を与えました。女優さんらしく、歌手とは違う初々しさで、丁寧に歌う姿はとても素敵なものでした。楚々とした声で技巧のないストレートな歌い方をされると、何だか歌手よりも格が上のような感じがしたものです。

 そして、「セーラー服と機関銃」は来生たかおとえつこ夫妻の最高傑作と言ってもよい名曲でした。「夢の途中」と題して本人も歌っていますし、他にも多くの歌手がカバーしていて、それがどれもそこそこの水準に達しているのですから、曲の良さが分かるというものです。

 この曲を囲んでいる多くの特典は薬師丸ひろ子の魅力がよく伝わるように計算されているようです。もちろん♪カ・イ・カ・ン♪も入っています。とても丁寧な仕事で、愛に溢れています。当時、日本を席巻していた角川映画の勢いというものを感じます。

 と言いたいところですが、この映画はかなりのトンデモ映画です。ただ、1982年の邦画興行収入第一位に輝いた大ヒット作品ですし、一般にそんな評価はされていないようですから、私の方が大そう分が悪そうです。

 女子高生がやくざの組長になることが荒唐無稽だのなんだのと野暮なことを言うつもりはありません。赤川次郎の原作は十分に面白かったです。しかし、映画での表現、特に後半の主人公が囚われてからのシーンはとんでもなくないですか?

 17歳の薬師丸ひろ子が撮影を終えて泣いてしまったと話している、セーラー服のスカートが地下鉄の風でまくれあがるシーンを含め、ラスト・シーンも相当変です。一歩間違うとカルトな映画ですけれども、この主題歌が全てを清めてしまいました。

Sailor Fuku To Kikanjuu / Yakushimaru Hiroko (1981 USM)