「御三家」として考えてみると、ドアーズの主ジム・モリソンはジミヘン、ジャニス・ジョプリンと並べて三大夭折のカリスマです。また、ドアーズはマザーズ・オブ・インヴェンション、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドと並べて三大カルト・バンドであるとも言えます。

 前者には異論のある人は少ないと思われますが、後者は意見が分かれます。というのも、ドアーズはヒット・チャートで大成功した人気バンドでもあったからです。リアルタイムでドアーズを知る方の中には違和感を感じる方もいらっしゃることでしょう。

 しかし、私が洋楽に目覚めた頃は、ジム・モリソンの死から3年くらいしか経っていなかったにも係わらず、日本盤は入手困難でした。音よりも伝説がはるかに先行して耳に入ってきたわけですから、カルト・バンドで何の違和感もありません。

 ドアーズとは、ウィリアム・ブレイクの詩の一節、「知覚の扉が清められる時、人は物事をありのままの姿で見るだろう。無限に。」から採られています。カリフォルニア大学で演劇を学んでいたジム・モリソンがこの詩に感化され、ドアーズという名のバンドを思い立ちました。

 ジムはキーボードのレイ・マンザレクに誘われ、彼のバンドに入ると、やがてドラムのジョン・デンズモアが加わり、最後にギターのロビー・クリーガーが、辞めたメンバーの後任として加入し、ここにドアーズが誕生します。

 彼らはロサンジェルスで活動を始めると、当地でのライバルでもあったラブの推薦でエレクトラ・レコードと契約を結び、ここにデビュー・アルバムを発表します。当初はレーベル側も躊躇していたようですが、少なくとも売り上げの点では全くの杞憂でした。

 シングル・カットされた「ハートに火をつけて」は全米1位となる大ヒットとなりましたし、アルバム自体もキャッシュ・ボックス誌のチャートでは1位になり、2年近くもチャートに居座ってしまいました。順風満帆とはこのことでしょう。

 ジム・モリソンの文学的な詩は文句なく美しいです。同時にとても分かりやすい。言葉の選び方が直截ですし、喚起するイメージはリスナーに適度な背伸びを要求しています。地獄を見た人なのでしょうが、我々にも垣間見ることができる地獄なのだといえます。

 そしてサウンドが先鋭的です。ジャズ的な創造性に満ちたデンスモアのドラムさばき、当時まだ10代だったクリーガーのラテン感覚のある不思議なギター、そして音楽監督的な立場にいたレイ・マンザレクの細い糸のようなオルガン。組み合わせの妙です。

 ところどころ日本のグループ・サウンズを思わせるところがあるのが面白いです。時代的にはGSが影響を受けたとしてもおかしくはありません。ベースレスの編成がビート感覚的にGSに近いようにも思います。面白いです。

 この作品はデビュー作にしてドアーズの代表作です。やはり「ジ・エンド」の美しさは格別です。「オイディプス王」を思わせる歌詞を頂き、迷宮に踏み込んでいくかのような11分間は圧巻です。♪突き抜けろ♪と始まるアルバムの最後はこれで「ジ・エンド」。深いです。

The Doors / The Doors (1967 Elektra)