何と言っても「LOVEマシーン」です。この曲がJ-POP史上に残る名曲であることは疑いありません。初めて聴いた時には「ああ、この手があったか」と思わず膝を打ちました。日本全国から同じ音が聞こえてきました。目から鱗が落ちた方が全国にいらっしゃいました。

 私などはこの呪縛から逃れられず、思わずアース・ウィンド&ファイヤーのベスト盤を買ってしまいました。恐るべし、ディスコ・グルーヴ。つんく♂とダンスマンのコラボレーションは革命的でしたし、モー娘。をオタクの世界から国民的アイドルへと押し上げました。

 アイドルは今や当たり前の存在になっていますが、現在のアイドルの原形を作ったのは疑いなくモーニング娘。です。モー娘。の成功がなければ、AKBグループももっともっと苦労したことでしょう。しかもモー娘。は2017年現在まだトップ・アイドルです。凄い。

 この作品は21世紀最初の月2001年1月に発表されたモーニング娘。のベスト盤です。シングル曲がインディーズ時代からメジャー11作目まで、それに加えてシングル・カットはされていない人気曲3曲を加えた15曲で構成されています。

 そう並んでいるわけではないのが少し残念ですけれども、20世紀のモー娘。はシングル曲を時系列で聴いた方が楽しいです。つんく♂のアイドル試行錯誤が良く分かります。まずはメジャー・デビューとなった「モーニング・コーヒー」。80年代のアイドルっぽい曲です。

 「サマーナイトタウン」からセクシーな情感たっぷりの大人歌謡路線になります。シャ乱Q的です。続くのは初のオリコン1位を獲得した名曲「抱いて!HOLD ON ME」。少女たちのもどかしさ全開で、おしっこが漏れそうな振り付けも斬新でした。

 これに気を良くした第4弾「Memory青春の光」はニューヨーク録音の意欲作でした。しかし、アイドル歌謡の何たるかを分かっていない外人アーティストの演奏とアイドル歌謡はややミスマッチでした。本当にいい曲なんですけれども。

 ここからは2作試行錯誤が続いて、いよいよ「LOVEマシーン」に到達します。ここでまさにモー娘。は弾けました。振り付けもこれまでとは明らかに違います。これが初のミリオンを記録し、アイドルとしては異例のロング・セラーを記録したのですから世の中変わりました。

 ここから「恋のダンスサイト」「ハッピーサマーウェディング」、一曲挟んで「恋愛レボリューション21」に至るダンスマンの編曲によるディスコ路線4作品は、モー娘。の第一期黄金時代でしょう。アイドルのバラエティー路線は見事に成功しました。

 こうして一旦殻を破って以降のモーニング娘。はまさにトップアイドルとなりましたが、男の子たちに消費されるアイドルではなく、むしろ全国の少女たちの憧れとなっていきました。そこが昔のアイドルと違うところですし、それ故に今のアイドル時代が生まれたのでしょう。

 このように、この頃のモー娘。はいろいろな読み解き方ができますが、つんく♂の音楽的な冒険の存在が背景にあることを忘れてはいけません。ダンスマンの編曲ばかりではなく、それ以外の曲も聴き込むたびに新しい発見があります。さすがです。

Best Morning Musume。1 / Morning Musume。(2001 Zetima)