デビュー作から1年もたたないうちに発表されたシカゴの2枚目のアルバムはまたまた2枚組でした。燃えたぎる創作意欲がシングル・アルバムでは収まり切らなかった。しかし、この頃は半年に一枚発表という人も珍しくなかったことを思い出しましょう。

 この作品は2枚組LPの各面ごとにまとまりがあります。B面とD面は組曲になっていますから歴然としています。しかし、A面とC面もそこまで緊密ではないものの、しっかりとまとまっています。要するにコンセプト・アルバムなんでしょう。

 ジャケットの内側には、D面を飾る組曲「栄光への旅路」で歌われるメッセージが印刷されています。邦題は分かるような分からないような感じですが、これは明らかにベトナム戦争のことを歌った歌です。「すぐに終わらせた方がよい」が直訳です。

 当時のアメリカでは1968年のテト攻勢を機に反戦運動が盛り上がりを見せていました。実際、徴兵されるアメリカの若者にとって、戦争は現実のものであり、反戦運動は自分たちの運命にも直結する問題でした。伊達や酔狂で運動しているわけではありません。

 その中でもシカゴの声はひときわ大きかったと思います。その思いを受け止めたレコード会社は収録曲全部に邦題を付けました。A面は1曲を除いてすべての曲に「ぼくらの~」という言葉がついています。当時の雰囲気が分かるというものです。

 そんな性格を帯びつつ、シカゴは更なる進化を遂げました。前作の時には「何もかもが手探り状態だった」彼らは、「自分たちが何者であるかも、少しずつ分かりかけた。そして、僕らは、もう少しきちんとした目的をもって、自分たちの音楽に接し始めたように思う」。

 アルバムは全米チャートでは4位まで上がるヒットとなり、さらにヒット・シングルも生まれました。それがデビュー作にまで波及して、そちらの人気も再び上昇するという充実ぶりです。2枚目を聴いて、もっと聴きたいという気にさせたということです。

 ヒット・シングルはシングル用に短く編集された「ぼくらに微笑を」と「長い夜」、さらに「ぼくらの世界をバラ色に」と「約束の地へ」の4曲です。ジェイムズ・パンコウ作曲が2曲、ロバート・ラムとピーター・セテラが一曲ずつ。これは強いです。

 バンドは曲作りばかりではなく、リード・ボーカルも3人が分け合っており、それも作曲とボーカルが異なることがしばしばです。いかに協調性にあふれるバンドであったかが分かります。それぞれのメンバーが持ち寄る曲に皆が興奮するという理想的な姿です。

 日本で最も有名なシカゴの曲の一つは「長い夜」です。ホーンよりもテリー・キャスのギターが冴えわたるハード・ロックの一曲で、シカゴのイメージを決定づけました。彼らのロック魂を見せつける一曲です。ホーンだけじゃないぞと。

 一方、「ぼくらに微笑を」は「偉大なるクラシック作曲家をまねること」を目指して作られた組曲の一つで、ここにも彼らの音楽のルーツを見ます。端正なロックをバリバリのホーンとともに聴かせるシカゴの絶頂が早くも訪れました。

Chicago / Chicago (1970 Columbia)