何とも呪術的なジャケットです。こういう時には白黒写真がマッチします。背景になっているのもよく見るとエジプトの壁画のような絵画です。この原始的な信仰を感じさせるジャケットがサウンドの性格をよく表しています。

 アフリカン・ヘッド・チャージは、ボンジョ・アイことボンジョ・アイヤビンギ・ノアを中心とする、先鋭的なダブ・レーベル、On-Uサウンドのユニットです。ボンジョすなわちアフリカン・ヘッド・チャージと言い切ってしまいましょう。

 ボンジョは1960年代終わりにガーナから英国に移って来たそうです。ローディ―として音楽業界に首を突っ込んだボンジョでしたが、バンドのコンガ奏者がステージに現れなかったことから、彼のパーカッショニストとしてのミュージシャン人生が始まります。

 ボンジョが名前にしているアイヤビンギは、一般にはナイヤビンギと呼ばれているもののようで、ウィキペディアによれば、ラスタファリアンの宗教的な集会で演奏される音楽のことです。これはケテ・ドラムと呼ばれるパーカッションにチャントを乗せたものだそうです。

 当然のことながら、このアルバムのサウンドはナイヤビンギを取り入れたものだそうです。このレーベルですから、手法としてのダブは使われていますけれども、あまりレゲエの匂いがしないのはそういうことなんでしょう。

 さて、本作にはOn-Uサウンドの顔役が脇を固めています。ドラムにはダブ・シンジケートの名ドラマー、スタイル・スコット、ギターとキーボードはスキップ・マクドナルドです。スキップはグランドマスター・フラッシュの歴史的作品「メッセージ」にも参加した人です。

 ベースにはジュニア・モーゼズとクロコダイル、もう一人のパーカションにサニー・アクバン、エフェクトにはプリズナー、みんなOn-U所属のミュージシャンです。プログラミングのデヴィッド・ハロウは後にジャイムス・ハードウェイ名義でクラブ・ミュージックで活躍します。

 こうしたレーベル・メイトに支えられて、ボンジョ・アイは存分に独自の世界を展開します。ジャケットさながらのモノクロームなビートに乗せて、フィールド・レコーディングされたアフリカの部族の歌声も使った詠唱が響くスタイルが中心です。

 通常のコマーシャルな大衆音楽というよりも、ゴスペル、あるいはより直截な宗教儀式の音楽のようにも聴こえるところがアフリカン・ヘッド・チャージの一番の特徴です。ビートは強烈ですしギターの響きも素敵で、先鋭的なポップ・ミュージックであることは間違いないのですが。

 発表は1990年ですから、もうハウスやテクノの時代でもありますし、英国では前年にソウルIIソウルがシーンを席巻しています。その中で超然と屹立しているのは、どこか民族音楽的なところがあるからです。ある意味、時代を超越した音です。

 ボンジョはその後ガーナに戻り、アフリカンな生活を営んでいます。その生活の一部として音楽があるようで、まさに理想的な状況にあります。その姿にも直結する音楽に身をまかせていると、音楽とは何か考えさせられることしきりです。

Songs Of Praise / African Head Charge (1990 On-U Sound)