とてもパンクなジャケットです。シャウトするボーカル、腰を屈めて足元で弾くベーシスト、走るギタリスト、オルガンにパンチを加えるキーボーディスト、ひたすらリズムをキープするドラマー。黒地に銀と赤。パンク以外の何物でもない。

 しかし、そんなイメージとは裏腹に、針を下ろすと、聞こえてくるのはオールド・スタイルな呑気なレゲエです。彼らは自らの音楽を、レゲエとソウルとゴミと決意のフュージョン、「ダーティー・レゲエ」と表現しています。グリット=ゴミでよかったでしょうか。

 「ダーティー・レゲエ」は彼らのデビュー・アルバムのタイトルでもあります。2003年のことです。このアルバムは通算3作目、ヘルキャット・レコードからの2作目に当たります。2007年の発表で、これが日本でのデビュー作にもなりました。

 ヘルキャット・レコードはアメリカのパンク・バンド、ランシドとバッド・レリジョンのメンバーが設立したレーベルです。アグロライツが日本で注目されたのは、このレーベルから作品を発表したからだと思われます。2009年にはフジ・ロックで来日までします。

 さらにこのアルバムとほぼ同時期に、そのランシドの中心人物ティム・アームストロングのソロ・アルバムに全面的に参加しています。よほど気に入られていたようです。本格的なレゲエというかスカ・バンドですから、ミュージシャン仲間には人気が高いのでしょう。

 アグロライツはレゲエ歌手フィリス・ディロンのバック・バンドとして2002年に結成されています。その後、何人かのボーカリストのバック・バンドを経験しながら、2003年にレコード・デビューを果たし、その後、ヘルキャットと契約しました。

 いかにも順調そうですが、ギターのブライアン・ディクソンによれば、米国では決してレゲエはポピュラーではなく、ロスでも苦労したそうで、それがこのアルバムのタイトルにもなっています。ようやくロスでもレゲエの波が押し寄せたと。

 この頃、彼らはマッドネスの前座を務めています。英国ではマッドネスの前座は誰にも務まらないと言われていたのに、彼らだけはレゲエにうるさいマッドネス・ファンに認められたのだそうです。それだけ本格派なんです。

 アグロライツのサウンドは1970年頃のレゲエをベースにしています。そこに、彼らが育ってきたアメリカのソウルやファンクのエッセンスを取り込むことで、よりレゲエを生き生きと、そしてダーティーにすることに成功しています。

 このアルバムはエンターテインメント・サイトのIGNが選ぶ2007年のベスト・レゲエ・アルバムに選出されています。アグロライツはメディアとの相性が大変良いようで、映画やテレビ、ビデオ・ゲームなどにフィーチャーされることが多いです。

 これは良く分かります。アグロライツのサウンドは、本格的なレゲエでありながら、とてもアメリカンな響きをさせています。とかくワールド・ミュージックを取り入れると教科書的になりがちですが、彼らの場合は自然に同時代の音楽にすることに成功しているようです。

参照:http://www.caughtinthecrossfire.com/music/interviews-2/aggrolites-interview/

Reggae Hit L.A. / The Aggrolites (2007 Hellcat)