DTS社の技術を使ったDVDオーディオ第二弾です。これがシリーズ化されるのであれば、それなりの環境を整えなければならないぞと身構えたものですが、幸いにしてなのか不幸にしてなのか、結局、DVDオーディオはこの後が続きませんでした。

 本作品はザッパ先生の息子ドウィーズルがアーカイヴの中から自分の名前が書かれた小さなボックスを見つけたことに始まります。それはドウィーズル誕生の1か月後の日付になっていました。中から出てきたのは4チャンネル録音された「チャンガの復讐」のテープです。

 フランクは60年代の終わり頃からすでに4チャンネル録音に挑んでいたのだそうです。1972年に購入した我が家のステレオも4チャンネルで、その当時、4チャンネル録音はステレオの未来形として大いに幅を利かせていたのでした。

 しかし、そもそも4チャンネル対応のレコードも少なかった上に、レコード針もそれ用のものが必要だということで、さっぱり普及していきませんでした。基本的にはステレオで十分、大たい四方を囲まれて音楽を演奏されることなどありませんから。

 ザッパ先生の4チャンネル実験はその後70年代を通して行われていたそうで、ここには1970年から1978年までの多チャンネル録音とミックスのオーディオ・ドキュメンタリーが収録されています。一部に新しい音源が足されていますが、それも最小限にとどまっています。

 まずはオリジナルのアナログ・テープを「焼いて」蘇らせ、それをデジタル・レコーダーに移し替えると、そこからドウィーズルによるプロデュース・ワークが始まり、シークエンサーを使って編集されていきました。このプログラムを「QuAUDIOPHILIAc」と称します。タイトルです。

 たとえば「シップ・アホイ」は大阪厚生年金会館で1976年2月3日に行われたコンサートの音源です。これは「黙ってギターをもう少し弾いてくれ」ですでに発表されていたもので、ここに収録されたのはその4チャンネル・ミックスです。

 このように既発表音源の4チャンネル・ミックスを含むところにオーディオ・ドキュメンタリーの面目躍如たるものがあります。聴き比べしてほしいということです。親切なことに本作品には普通のステレオ・バージョンも収録されており、聴き比べはなおのこと容易です。

 両方聴いてみると、両者が違うことは分かるのですが、残念ながら我が家には5.1chシステムはありませんから、本当の違いというものが良く分かりません。同じステレオ装置で聴いてみると、5.1chの方がボわボわしているという情けない感想しか浮かびません。

 そのオーディオ面でのご感想は他の方に任せることとして、私としてはやはり未発表音源が気になります。ここで未発表と冠されたのは全10曲中5曲だけです。そのうち、最も注目すべきなのが、「チャンガ・ベースメント」です。

 「ドウィーズル」の箱に入っていたこの曲は「チャンガの復讐」の元になった曲です。特徴的なラインを繰り返すマックス・ベネットのベース、エインズレー・ダンバーのドラムとイアン・アンダーウッドのキーボード、先生のギターだけによる簡素な演奏は素晴らしいの一言。

QuAUDIOPHILIAc / Frank Zappa (2004 Barking Pumpkin)