3か月連続リリース最終作は、これまた明快なコンセプトに基づくミニ・アルバムになりました。収録時間は20分と最短ですけれども、その短さそのものもコンセプトにぴったりと合致しています。単なる偶然かもしれませんが。

 今回はニューヨークで録音したロケンロールなアルバムです。プロデュースにはクラッシュやキース・リチャーズ、ローリン・ヒルなどを手掛けた独立系のプロデューサー、ジョー・ブレイニーが起用されました。彼のHPには、ちゃんと本作品のジャケットも掲載されています。

 ゲストの起用も最小限に、メンバーが普通に担当楽器を演奏しています。考えてみれば当たり前ですけれども、ユニコーンのアルバムでは珍しい。まさかの笠置シズ子「東京ブギウギ」のカバーを含めて王道ロック作品です。

 ブックレットもシンプルで、各メンバーの顔写真を並べるという、前作のカメも同列で写っているところを除けば、これまた王道路線です。さらにご丁寧にアメリカ人ジャーナリストによるライナーノーツが入っています。とことんそれっぽいです。

 このライナーノーツがめっぽう面白い。キース・リチャーズの誕生パーティーでブレイニーと知り合ったというシカゴ・ミュージック・エキスプレスのナサニエル・ローソンという記者が書いていることになっています。フェイクかもしれませんが、そうだとしても天晴です。

 「どうみてもティーンエイジャーと思われる」メンバーと出会い、「確かにこのユニコーンはすばらしいバンドだ」と認めるローソンですが、「この変な若者達が演奏するのがごくストレートでシンプルなロックンロールというのが私には理解できない」と綴っています。

 「本人達はこれが本当の私たちだというのだがもっといろいろなジャンルに広がっていける可能性があると思うのだが、何か信用できないポリシーだ」と。全くもってその通りです。何でもアリのユニコーンのシンプル・ロックンロール・アルバムこそ異質ですから。

 とはいえ、ここでのユニコーンは何だかほっとします。特に「ロックミュージシャンにしては珍しく早起き」な川西幸一が、「自分の生き様を歌っている」という「レベル」は超正統派ロックです。この曲の英語タイトルはジェームス・ディーンの「理由なき反抗」です。

 また「昔はパンク野郎」だったEBIこと堀内一史の「鼻から牛乳」のような美しいロック・バラードも素敵です。これまたストレートな「ハヴァナイスデー」と「魚の脳を持つ男」からの並びも絶妙だろうと思います。それが「レベル」へと続きます。

 「ゆっくり日本語をしゃべることによってアメリカ人とコミュニケートしようとする不思議な男」阿部義晴の金髪ボイン・コンプレックス丸出しの曲がやや異質です。ただこれがなければユニコーンらしくない。どこかに裂け目が用意されています。

 最後は「東京ブギウギ」、カバーとして秀逸です。原曲のモダンそのものの雰囲気にはこだわらないものの、正面から楽曲を捉えていて、リスペクトを十分に感じることができます。3か月連続リリースの最後の最後は自分たちへのご褒美だったのでしょうか。

Have A Nice Day / Unicorn (1990 CBSソニー)