3か月連続リリースという野心的な試みです。さすがに最初の「ケダモノの嵐」に続く2作品は長さからいえばミニ・アルバムとなっています。後に2イン1で出されたこともあるくらいですから、3作まとめてフル・アルバム2枚組といったところでしょう。

 この二作目となるミニ・アルバムのコンセプトは明快です。自分たちの曲を他の人に料理してもらったのがこのアルバムですから。ボーカルは自分たちですし、楽器も演奏していますから、基本的には編曲をお願いしたということになります。

 それでも全6曲のうち、2曲は自分たちで編曲しています。ただ、これもいつものユニコーンとは違い、かなり野心的なアレンジになっていますから、気分は他人に編曲をまかせたかのようなものだったのではないでしょうか。

 選ばれた人はまず長谷川智樹。大阪出身のミュージシャンで、かなり歌謡曲からアニメ、ロックまで幅広い活躍をしている人です。ビッグバンド風の「ママと寝る人」を手掛けています。演奏はベテランの数原晋が率いています。渋い組み合わせです。

 「12才」は矢野誠の編曲です。演奏クレジットは大正エロチカとされていて、それっぽい雰囲気が出ています。矢野はムーンライダーズやティン・パン・アレイなどの日本語ロック初期人脈の人で、ユニコーンより一回り上の世代です。

 問題作「PTA~光のネットワーク」は小西康陽の編曲です。この曲は奥田民生と阿部義晴の共作で、当時人気だった光GENJIとTMネットワークをパロディーにしたものです。奥田のボーカルはTMネットワークの宇都宮隆を真似しています。

 パロディが得意だろうとピチカートVの小西に白羽の矢が立ったそうで、確かに見事な仕上がりです。チープな打ち込みサウンドがたまりません。♪たいへんな職についたね えらいね♪と先生に同情する歌詞もいいです。先生方も涙されていることでしょう。

 そして「俺の走り」はまさかの仙波清彦を起用しています。仙波流邦楽の家元に生まれ、はにわオールスターズなどでクロスオーバーに活躍している仙波の「変な楽器」によるお囃子風の演奏はアンプラグドな名演です。ゲストはチャクラやワハハの小川美潮です。

 自分たちが編曲している「初恋」はロックバンドにあるまじきパーカッション中心の歌もので、仙波はにわ隊の影響を受けて自分たちでもやってみたのではないでしょうか。「ボサノバ父さん」はその名の通りボサノバ風味で、意味深な歌詞を歌っています。

 ジャケットは絵本になっていました。子どもの人気を得たいという理由だと言われていますが、絵本を読むような子どもがCDを買う訳もなく、お母さん狙いでしょうか。ユニコーンらしいなとは思いましたが、ちょっと扱いが面倒でした。

 何でもアリのユニコーンがさらにその振り幅を広げた作品でしょう。それまでのユニコーン作品とは一味違うので、ほーっとは思ったものの、あまり聴きませんでした。久しぶりに聴いてみて、またまたほーっと思いました。何年たっても感心する変なアルバムです。

Odoru Kame Yapushi / Unicorn (1990 CBSソニー)