このアルバムのことを知っていると何やら鼻が高い感じです。ヒットには恵まれませんでしたけれども、アダルト・オリエンテッド・ロック、すなわちAORの名盤としてミュージシャンや音楽通にはとても有名なアルバムです。

 それもそのはずで、エアプレイはジェイ・グレイドンとデヴィッド・フォスターのバンドです。二人とも押しも押されもせぬ名プロデューサーですから、誰もこのアルバムに異論をはさむことは難しいというものです。まさにスーパー・ユニットの名にふさわしい。

 しかし、このアルバムは1980年発表ですから、二人の活躍もまだ始まったばかりです。スーパースターとなった後に組んだユニットではありませんから、当時スーパー・ユニットなどと呼ばれたはずもありません。

 スタジオ・ミュージシャンとして活躍しながら親交を温めた二人は、遂に自らもフロントに立ってアーティストとして活動することを決意し、デモを作成します。それがマライア・キャリーを手掛けた業界の実力者トミー・モトーラの目に止まり、デビューと相成りました。

 しかし、アルバム発表時にはトミー一派とは離れてしまったがために、まともなプロモーションもされず、こうして幻の名盤になってしまいました。いや、このまま廃業してしまっていれば本当に幻なんでしょうが、二人は大成功しますから、幻ではありません。いつでも入手可。

 ジャケットにはジェイとデヴィッドしか写っていませんが、エアプレイにはもう一人、トミー・ファンダーバークというボーカリストがいます。当初全編リード・ヴォーカルを予定していたジェイは本来シンガーではないとして、本職をスカウトしたそうです。

 トミーはそれまでほとんど無名のミュージシャンでしたが、ここで大きなチャンスをつかんだわけです。どうせならジャケットにも写してあげればよかったのにとも思いますが、バンド・メンバーのクレジットがあるだけでも良しとしましょう。

 参加ミュージシャンはTOTOのメンバーなど、当時のAORサウンドにはよく登場するミュージシャンが揃っています。いかにもジェイとデヴィッドの作品らしいです。サウンドもこの頃の最先端のもので、80年代型AORの典型です。これが基本と言っているようなものです。

 一番有名な曲は「アフター・ザ・ラヴ・イズ・ゴーン」です。これは前年にアース・ウィンド&ファイヤーが大ヒットさせ、グラミー賞も受賞しています。もともとは、ジェイとデヴィッドがビル・チャンプリンのために書いた曲で、EW&Fから切望されて渡したのだそうです。

 エアプレイはこのアルバムを残しただけです。二人の友情はその後も変わらず続きますし、このユニットを特に封印するつもりもなかったのでしょうが、自然消滅。二人は、アーティストとして活動することに執着しない根っからのプロデューサー気質だったんでしょう。

 この紙ジャケ再発盤には中田利樹さんの渾身のライナーが付けられています。メンバー3人へのインタビューで構成された、愛に溢れた仕様です。AORは日本では特に人気の高いということがよく分かります。読みごたえもあるし、資料的価値も高い。素晴らしいです。

Airplay / Airplay (1980 RCA)