無事にデビューしたユニコーンですが、キーボードを担当していた紅一点の向井美音里が脱退してしまいます。その後、ベースの堀内一史と結婚することになりましたから、バンド脱退も平和裏に行われたものと推測されます。

 代わりにいよいよ阿部義晴が加入します。もともとデビュー作のレコーディングにも参加していましたし、その後のツアーやこの作品の制作にも全面的に係わっていた模様ですから、よほど息があったのでしょう。誰も不幸にならないメンバー交代です。

 しかし、阿部の正式加入はこのアルバムの発表直前だったことから、ジャケットにはまるで写っていません。そのため、クレジット上は唯一の4人組ユニコーン作品となります。チープトリックなみに男前組とお笑い組に分けたようなジャケットは楽しそうです。

 公式サイトに記されたエピソードによれば、やはり当時はポストBOOWYをどう作るかというムードの中で売り出されたそうです。それが、「あまりにもそのテのバンドが多かったので、むしろ違う個性を出して唯一無二な存在にした方がいいだろう」と変化していったそうです。

 主にビジュアル面での話ですが、「そしてユニコーンの音楽性も既成の枠を超え、どんどんその幅は広がっていくのでした」というわけで、このアルバムはサウンド面でもデビュー作とはかなり異なり、誰もが良く知るユニコーンとなっています。

 裏ジャケットに写る川西幸一は、「『俺たちは女の子にちやほやされるために音楽やっていくつもりはない!』と熱いコトにな」って、突然予告なしに現れたモヒカン姿です。これをスタッフが面白がってポジティブに捉えたことからジャケットに登場となったそうです。

 ここでユニコーンの将来が決まったような気がします。一応、ポストBOOWYでやってみたものの、元々彼らのキャラでもないし、まあ無理せずに素のままでやってみましょうよ、ということになり、サウンド面でも憑き物が落ちたように自由になりました。

 冒頭の「アイム・ア・ルーザー」からして、ドラムが変です。前作っぽい入り方の奥田民生のボーカルで始まりますが、どんどこドラムの叩きだすリズムは何だかまともじゃありません。かと言って小難しいわけでは全然ありませんが。

 さらに「抱けないあの娘」のビートルズっぽいギターやら、「眠る」のバリバリのベース、全編で活躍する手島いさむの達者なギターなど、パーツパーツがやけに耳を惹きます。80年代的に全体の響きを重視していた前作とは大きく違います。

 また、「ペケペケ」では初めてベースの堀内一史がリード・ボーカルをとっています。奥田民生と違って綺麗な声です。個性のベクトルが違う向きなのがとてもいい。4人とも曲作りにクレジットされるようになってきて、いよいよ本領発揮です。

 歌詞の世界も幅広いテーマが選ばれていますし、ポップでロックなサウンドの幅もとにかく広い。何でもありのユニコーン的世界が誕生した二作目は、80年代的な色合いを残しつつ、脱皮が終わったばかりの初々しさに満ちています。

Panic Attack / Unicorn (1988 CBSソニー)