日本にはバンド・ブームなるものがありました。1980年代終わりから1990年代前半にかけてのことです。その当時、私は日本に居なかった時期があったことから、このブームをほとんどスルーしてしまいました。

 そんなわけで、ユニコーンが、ブルー・ハーツ、ジュン・スカイ・ウォーカーズ、ザ・ブームとともにバンド四天王と呼ばれていたことも、随分後になって知りました。当時の日本はどんな状況だったのか、イカ天も見たことがない私には皆目見当がつきません。

 ともかく、これはユニコーンのデビュー・アルバムです。後のユニコーンはそれこそ大好きなんですが、このアルバムはほとんど初めて聴くようなありさまです。発表は1987年10月のことで、アルバム自体はさほどヒットしませんでした。

 ユニコーンは1986年に広島で結成されました。このアルバム発表当時は、キーボードが阿部義晴ではなくて、紅一点の向井美音里でした。阿部はシンセサイザー・マニピュレーターという形でクレジットされていますから、係わっていたことは係わっていたわけです。

 残りのメンバーはもちろん奥田民生、手島いさむ、川西幸一、堀内一史の四人です。プロデュースは彼らのサウンド作りに大きな影響を与えた笹路正徳と、スタジオ・ミュージシャンが結成したフェンス・オブ・ディフェンスの西村麻聡が担当しています。

 このアルバムは公式サイトでは、「名曲『Maybe Blue』が光るアルバムだが、当時シングル化(ヒット化)を避けたところに、後のユニコーン・奥田民生の活動をうかがわせている」と紹介されています。そうだったんですか。シングル化を避けたんですか。

 シングルを出さないところに、当時のバンド・ブームの皆さんの姿勢が滲んでいるのかもしれません。しかし、バンドをアイドル的に捉えていた雑誌にもよく出ていたそうですから、そのアンバランスなところが面白いです。

 このデビュー・アルバムは後のユニコーンのサウンドとはかなり異なっています。まず、ほぼ全曲リードをとる奥田民生の歌声が高い。それに声の録り方がとても80年代的です。リバーブが効いているというのでしょうか、奥行き重視。

 サウンド全体もそんな感じです。特にドラムの音がザ・80年代です。当時のバンドで言えばボウイに感じが似ています。曲調はさすがはユニコーンというロックでポップなものばかりで、これはこれでカッコいいです。ただ、後の何でもあり感はありません。

 これは歌詞を聴くと良く分かります。♪鼻から牛乳♪と歌うのではなく、青春ロック/ポップス作詞の手引きという本があるならばいかにも乗っていそうな言葉を紡いでいるイメージ。要するに、当時考えられていたロックのフォーマットに従ったアルバム作りになっています。

 そんな中でも名曲「メイビー・ブルー」を始め、後々まで語られる曲が並んでいるところはさすがです。いかにも若気の至り的なアルバムで、ユニコーン史の中では恵まれていない気がしますが、後の大物ユニコーンの青春の一コマとしてはとても愛おしいです。

Boom \ Unicorn (1987 CBS Sony)